都は5月11日、PCR検査で判明した新型コロナの感染者数について、3月22日から5月6日までの間に累計111人の報告漏れがあったと明らかにした。またこれとは別に、35人について重複して人数を数えていた。このため、都は差し引きで計76人について、5月10日まで実際よりも少ない感染者数を公表していたことになる。この集計ミスで宮坂副知事肝いりのサイトにも誤ったデータが表示されていた。こちらは12日までに修正されたという。

 なぜ、こうした問題が起きたのか。都福祉保健局感染症対策課によると、PCR検査の結果は、検査を実施した医療機関から23区などの保健所に報告され、そして保健所から都に送られる。その際、結果を紙に書き込んでファックスで送るという、“爆速”とは程遠いなんとも悠長な手法が採られていたのである。記入用紙には一定のフォーマットがあったが、手書きで記入されたケースもあった。

 ファックスを使用すればままあるように、送信エラーで送ることができていないのに気付かなかった、などといった事態が111人の報告漏れにつながった。また35人の重複については、都の担当者がファックスで送られた紙のデータを見誤って集計したことが原因だった。

誰もが知る現場の多忙と混乱ぶり
都は「保健所は都の部局ではない」と回答

 国内外では現在、外出禁止や自粛からの「出口戦略」をめぐり議論が交わされている。国内ではただでさえPCR検査数が少ないことをめぐって百家争鳴状態だが、感染者数の正確な把握が出口戦略の重要な判断基準となる。そもそも感染者数を間違いなく把握し、公表するのは行政の重大な責務であることは言うまでもない。

 今回の感染者数の報告漏れや重複の一義的な原因は、各保健所や都の担当者のミスによるものだ。しかし、彼らだけを糾弾するわけにはいかないことは、多くの都民がすでに知っているはずだ。

 というのも、国内で本格的な感染拡大が顕在化した3月下旬以降、全国の保健所にはPCR検査を求める電話が殺到し業務がパンクしていると、新聞やテレビでこれでもかというほど報じられてきた。

 加えて過去の保健所そのものの統廃合や、人員や予算を削減された状態で、職員は昼夜を問わず多忙な業務に追われていた。どんな人材であれ、ヒューマンエラーが起きない方がむしろおかしい状態であったことは容易に想像できる。都の感染症対策部門も同様である。