コンシューマー・ビジネスのモロさ

 昨今、若くて優秀でチャレンジ精神旺盛な人材が「起業」を人生の一つの選択肢として考えるような風潮になってきた。

 一昔前と比べると、創業時における銀行融資、富裕層のエンジェル資金の活用、あるいはベンチャー・キャピタルの投資など、豊富な選択肢が用意されるようになってきたし、マーケットでは優秀な人材の流動化が進んでいる。

 こうして起業を後押しする環境(インフラ)が整ってきた点も重要だが、後進が「起業してみよう」と本気になる最大の理由は、成功体験を持つベンチャーの経営者が多く現れてきたことにある。

 IT業界に限っていえば、成功者の多くはコンシューマー(消費者)向けのビジネスを手がけた経営者だ。携帯電話やスマートフォン、あるいは携帯端末タブレット向けの便利なアプリケーションやオンラインゲームを一般のコンシューマーに提供する会社がずいぶんと増えてきて、それらの成長が著しい。

 コンシューマー向けの製品は、それを欲しい(または必要)と思った個人が、誰の許可も必要とせず、条件さえ整えば購入を即決する。要するに、自己責任において物事が完結するのだ。だから、いいモノは一気に広がって爆発的にヒットする商品が生まれるが、逆に一瞬にして消え去ることもある。コンシューマー・ビジネスの「よさ」と「モロさ」はそんなところにある。

 対して、日本のB2B(Business to Business:企業間取引)市場でITベンチャーが成果を上げるのは非常に難しい。そして、「世界を変える」可能性を持つのは、コンシューマー・ビジネスよりもむしろB2Bビジネスだと確信している。

 前回(9月4日掲載)にも書いた通り、〈イーパーセル〉はB2Bを行うITベンチャーで、難しい挑戦だからこそ、僕はそこに大きなやりがいを感じている。