昨年12月、全都道府県の農協中央会長が集まる会議で中川氏率いる京都中央会は、「何度も定年延長に反対してきた。このままでは(全中の)会費は払えない」(中川氏の代理の専務が発言)と強く抗議したという。それでも中家氏は定年延長を強行したため、両氏の関係は冷え込んだとの観測もあった。

 だが、元小泉チルドレンで衆院議員を務めたこともある中川氏にとって、権力を掌握するため主張の異なる相手と組むことなど朝飯前だ。中川氏は中家氏への支持を表明するのとバーターで共済連会長の椅子を引き寄せようとしているとみられる。

 中川氏が実権を握った暁には、定年延長の反対どころか、会長の定年制廃止や年齢制限の10年以上の緩和を主張すると見る農協関係者は多い。というのも、年齢制限が「70歳以下」のままでは、中川氏(68歳)が共済連会長に就任して3年の任期を終えると71歳となり、2期目に挑戦できないからだ。

 中家氏による今回の定年延長のおかげで2期目への挑戦が可能になった全農会長の長澤豊氏(6月に70歳)は、中家、中川の両氏に近い。中家氏が全中会長に再選されれば、長澤氏も続投すると見られている(全農と共済連の会長は全国の農協組合長による投票ではなく、20人ほどの経営管理委員〈業務執行を監督する会社の取締役に相当〉から選ばれる)。

 定年を延長した中家氏の再選は、全国組織の会長候補にとどまらず、全国の農協の老害リーダーたちにも、トップに居座ることの免罪符を与えることになる。

 そうなればただでさえ農家から「長老たちが甘い汁を吸う組織」と見られているJAグループがますます支持を失うのは必至だ。