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岸博幸のクリエイティブ国富論

中央政府にすがる日本の地方自治体首長はニューメキシコ州知事の実績を見習え

リチャードソン氏の商務長官指名辞退で思ったこと

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第22回】 2009年1月9日
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 皆さん、明けましておめでとうございます。今年は激動の年になります。マスメディアもその影響は免れません。日本が良くなるよう、問題提起をどんどんしていきますので、どうかよろしくお願い致します。

 しかし、新年早々米国から大変なニュースが来ました。米国のオバマ次期政権で商務長官に指名されていたビル・リチャードソン ニューメキシコ州知事が、指名を辞退したのです。ニューメキシコ州の公共事業を受注した企業からの政治献金を巡って、同州政府に対して当局の捜査が行われているためですが、私は、オバマ次期政権の布陣の中でリチャードソン氏に一番注目していたので、非常に残念です。

中央に頼らない
経済活性化モデルの実践者

 なぜ私がリチャードソン氏の商務長官指名に注目していたかというと、同氏は最も積極的な官民パートナーシップ(public-private economic partnership)推進論者であり、実際にその手法でニューメキシコ州経済を大きく活性化したからです。2003年に同州知事に就任して以来、まさに同州での官民の壁を取っ払って経済を活性化したのです。

 例えば、州政府の予算数億ドルをベンチャー誘致のための投資資金とし、太陽光発電、医療機器などのベンチャーの州内での起業に投資しました。ハリウッドのスタジオによる映画製作を同州に誘致するため、補助金や無利子融資を用意し、昨年1年で80もの映画が同州で製作されました。同州での宇宙飛行基地の建設に2.5億ドルを投じ、英国ヴァージンの宇宙飛行会社(ヴァージン・ギャラクティック)を誘致しました。また、州内にある3つの大学の研究所と2つの国立研究所を活用して、太陽光、バイオ燃料などの再生可能エネルギーに関する産学連携を推進しました。

 官民パートナーシップによる産業振興以外にも正しい政策を連発しています。州知事に就任早々、州の所得税やキャピタルゲイン課税を大幅に減税しました。それに加え、州内の企業が年収4万ドル以上の新たな雇用を産み出したら、その雇用に関する賃金や福利厚生の10%を税額控除できるようにして、ヒューレット・パッカードやフィデリティなどの大企業の同州進出を後押ししました。ついでに言えば、インフラ整備にも積極的に取り組んでおり、もうすぐサンタフェとアルバカーキーを結ぶ高速鉄道も開通するようです。

 これらの政策の積み重ねにより、かつては米国内で最悪を記録していたニューメキシコ州の失業率も、昨年段階で米国平均の6.5%を下回る4.5%となったのです。

自治体首長に見習ってもらいたい
リチャードソン氏の見識と信念

 もちろん、リチャードソン氏の政策がすべて成功している訳ではありません。ニューメキシコ州が多額の出資をしたベンチャー企業の中には倒産の危機に瀕しているところもあるようです。ただ、州経済の活性化に成功したその手腕は高く評価すべきではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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