脂が乗って丸々と太った鰯が、魚売り場に並ぶ季節になりました。
太古から日本の食卓を潤し、畑の肥料や家畜の餌となり、照明用の油(魚油)として使われるほど豊富に獲れていた鰯は、多い時には日本の総漁獲高の1/3を占めていたそうです。
ここ数年は徐々に戻って来ているとはいえ、今や水揚げが最多期のわずか3%にまで激減し、鰯を餌とする魚までもが寄り付かなくなることを憂う声も聞こえてきます。
【材料】鰯…2尾/味噌…大さじ4/酒…大さじ1/みりん…大さじ1
【作り方】①お好みの味噌に酒とみりんを加えてよく練っておく。②鰯は頭と内臓を出して塩水で洗い、水気を切ったら腹に1を詰めて両面を焼く。
現金なもので、余るほど獲れていた頃は、鰯はずっと下魚扱い。
『鰯の頭も信心から』ということわざがありますが、これも、こんなつまらないものでも信心すればご利益がありますよ、という意味で、鰯の頭が価値のないものの代表になっています。
鰯の語源も、「いやしい」が「いわし」になったのだという説もあるほどで、平安時代の貴族をはじめ、身分の高い人々は口にするものではない、とされてきました。
“世界最古の恋愛小説”と言われる『源氏物語』の作者・紫式部の逸話に、このようなものがあります。