
そこで、この技術を社会システムとして成立させるために、使用済の紙おむつの排出から回収、処理、資源化というプロセスの中でアライアンスパートナーを探すことから始めることにしたのです。
まず、紙おむつの排出先として浮かんだのが、病院や老人ホームでした。初めの頃は、“環境問題”という切り口からアプローチをしたため、思うような成果が上がりませんでした。世の中にあまた存在する環境企業のひとつ、としか見られなかったのです。
でも、病院の実務担当者との会話を重ねる中で、本質的なニーズが見えてきたのです。それは、“院内感染”というキーワードでした。皆さんもご記憶にあるかもしれませんが、病院などで排泄物処理の過程でノロウィルスが院内感染し、死者をも出すという大惨事がありました。この事件は、看護士が排泄物に直接触れたことや、空気感染したことが原因とされています。
しかしこの会社の処理技術を使うと、排泄物を含んだままの紙おむつをビニール製のゴミ袋に入れそのまま処理機に投入するだけです。ですから、汚物に直接触れることも、空気感染することもなくなり院内感染リスクは大幅に軽減します。このことは“環境”という切り口だけから考えていたら、決して見えないことでした。
このことをきっかけとして、病院のバックヤード業務を受託する会社とのアライアンス構築が出来ました。
次に使用済の紙おむつを実際にゴミとして処理している自治体を当たりました。
自治体では、「高温処理をするために焼却炉の傷みが激しくなる」という問題に加え、焼却温度を上げるために使う重油の価格高騰が財政を圧迫しつつありました。更に、地球温暖化対策として、二酸化炭素の排出削減が求められていました。こうした自治体のニーズを踏まえ、紙おむつの処理だけではなく、新たにメタン発酵技術を持つ会社とのアライアンスを構築したのです。
この会社とのアライアンスにより、生ごみをメタン発酵させ、そこから電気、ガスのエネルギーを取り入れ、それを紙おむつ処理機の熱源に利用するというアイデアが生まれました。この仕組みを用いれば、重油の消費を抑制できるだけでなく、紙おむつの処理にかかる二酸化炭素の排出もゼロに抑えられることになります。「本質的問題(顧客ニーズ)を掘り下げていったら、環境対応のアイデアが後からついてきた」という感じですね。
でも、こうした大掛かりな仕掛けや、アイデアは、自社単独の技術に固執していただけでは生まれなかったのではないでしょうか。自社の技術をきっかけにし、そこに志を同じくするアライアンスパートナーが、それぞれが得意とする技術を持ち寄って生まれた成果なのです。
企業の内部から社会を見るのではなく、この会社のように「社会のグランドデザインをまず考え、そこから企業としての役割を見出していく」ということは、とても大切なことだと思います。特に“環境”をキーにした公益性の高いプロジェクトであればあるほど、このことが重要になってくるのです。
今、この会社の技術は多くのメディアに取り上げられ、全国の病院、老人ホーム、自治体などから連日相談が相次いでいます。また、業態を越えたアライアンスパートナーを得ることで、病院における“院内感染”の事例のような“環境”以外の切り口からも、この技術の潜在的ニーズが明らかになっています。今後、この事業がどのように展開していくのか、楽しみでなりません。
木村社長は、こうおっしゃっています。
「資源のない日本は、これから高齢化社会になって紙おむつの消費量が増えるんだから、それを燃料として使わない手はないよね。僕だってきっと紙おむつの世話になるわけだし、それまでに社会の仕組みをつくって、堂々と紙おむつを穿きたいんだよ。」
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