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岸博幸のクリエイティブ国富論

JAL再上場の“失敗の教訓”

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第200回】 2012年9月14日
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 9月19日にJALの株式が再上場されます。予定どおり順調に運べば政府に3000億円以上の利益をもたらすことから、政府が関与した企業再生での最大の成功例ともてはやす報道もありますが、それは本当でしょうか。日本の企業再生の歴史に大変な汚点を残したという点で、政策的には最大の失敗例と考えるべきではないでしょうか。

不透明な第三者割当増資

 政策的に失敗と考えるべき理由の1つは、先週もここで書いたように、政府の無節操なまでの過剰支援が航空産業の競争を歪めた点にあります。しかし、それと並ぶくらいに大きな問題があることも忘れてはいけません。それは、不透明な第三者割当増資(公的資金3500億円による資本増強に加えて行われた127億円の第三者割当増資)という、再生過程における透明性の欠如です。

 JALの再生を担当した企業再生支援機構(以下「機構」と略す)で、実際の再生を担う企業再生支援委員会の委員長を務める瀬戸英雄氏は、第三者割当増資が不透明であるとの指摘に対し、会社更生手続きとして“裁判所の許可を得ているから”という趣旨の答弁をしていますが、裁判所の許可を得ていればそれでいいのでしょうか。

 JAL再生に関して必要だった透明性とは、投入した公的資金に関わる透明性の問題、損失リスクを最終的に負わされる国民一般の目線での透明性の問題に他なりません。会社更生手続きは、法廷での公開なしに裁判官の職権手続きで進められ、裁判所の責務も直接の利害関係者間の公平性の担保に過ぎませんので、問題となる透明性とは関係ありません。

 そう考えると、企業再生委員長の瀬戸氏は、管財人団の実質的トップかつ公的機関である機構の首脳の1人という公職にある者として、自らこの説明責任を第三者割当実行時点で果たすべきでした。しかし、国会での答弁のとおり裁判所の許可だけで進めたため、第三者割当増資については、株主名も割当価格もその算定根拠も、すべて国民に伏せられたままです。

 ところが、その内実をみると疑問だらけです。その筆頭は第三者割当増資での割当株価です。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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