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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

今後10年で10億人増!激増するアジアの
中間所得層こそ日本経済成長のカギ

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第11回】 2012年9月18日
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グラビティの力

 経済危機で苦しんでいる欧州の学者から、次のように言われたことがある。

 「日本国内では将来に対する悲観論が蔓延しているようだが、それはおかしい。アジアはこれから、世界で最も高い成長を実現するだろう。欧州がアジアの成長の恩恵を受けるためには、わざわざそこまで出て行く必要がある。日本は、そのアジアの中にある」

 この欧州の学者の指摘は重要である。「距離」の重要性を指摘しているからだ。

 国際経済学の重要な考え方に「グラビティ・モデル(gravity model)」というものがある。オランダの経済学者のヤン・ティンバーゲンが50年ほど前に提起した考え方である。ティンバーゲンはその後、第1回のノーベル経済学賞を受賞している。

 グラビティの考え方は、物理学の引力の法則を借用したものだ。二つの物質の間に働く引力は、距離に反比例し、そして質量に比例する。つまり近いものほど引っぱり合う力が強くなり、そして重い物質ほど強く引き合う。これが物理学の引力の法則だ。

 二国間の貿易にも同様の関係が見られる。距離が近い国のあいだの貿易額のほうが、距離が遠い国のあいだの貿易額よりも大きくなる傾向が強い。そして、大きな国のあいだの貿易のほうが、小さな国のあいだの貿易よりも大きい。

 当たり前のことのように見えるが、ティンバーゲンはデータでこれが見事に当てはまることを明らかにした。それから50年、さまざまな経済学者によって、さまざまな国のデータを使ってグラビティ・モデルの検証が行われてきた。実によく当てはまるモデルであり、国際経済学では基本的な考え方として定着している。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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