日中関係がにわかに緊迫している。引き金となったのは、9月11日の日本政府による尖閣諸島国有化の決定だ。中国政府はただちに撤回を要求、中国軍も報復措置を示唆する異例の声明を発表するなど、緊張が高まっている。はたして尖閣問題は日中関係にどのような影を落とすのだろうか。
「中央政府の会議で、日本からの投資申請は受け付けないことに決まった。今回は認可するが、次回は難しいだろう」
日本政府の尖閣諸島国有化から一夜明けた9月12日、会社設立の認可を得るため上海のある区政府を訪れた日系企業の担当者は、窓口の担当官の言葉を呆然と聞いていた。最悪の事態は回避できたものの、今後の事業展開に不安が募った。
尖閣国有化の余波はこれだけではない。中国を訪問中の佐藤雄平福島県知事が、11日に予定していた中国民用航空局長との会談を一方的にキャンセルされたり、15日に開催される上海観光祭のパレードに参加予定だった大阪市と香川県が出展中止を要請されるなど、政府間だけでなく民間の交流にも影響が出ている。
尖閣諸島をめぐる日中両国の関係が緊張の色を帯び始めたきっかけは、4月の石原慎太郎東京都知事の発言だった。尖閣諸島の五つの島のうち三つを、都で買い上げることを表明したのだ。中国政府は「不法な措置」として監視船を尖閣諸島周辺の海域に派遣するなど、反発を強めた。
8月15日には香港の活動家が尖閣諸島の魚釣島に上陸、14人が逮捕・強制送還となった。すると19日に東京都議ら10人が政府の許可なく同島に上陸、27日には丹羽宇一郎駐中国大使の公用車から国旗が奪われる衝撃的な事件が発生するなど、両国関係は緊張の度合いを強めていった。
Photo:AFP=JIJI(左)、JIJI(右)