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組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

“学習性無力感”が蔓延する職場に未来はない!
閉塞状況を破る「賢いポジティブバカ」のつくり方

――処方箋⑧部下のヤル気を奪う「暗黒フォース型上司」になるな

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第8回】 2012年9月19日
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こんな不景気で何をやっても無駄
日本社会に蔓延する「学習性無力感」

 「色々やってもね、結局無駄なんですよ、今は不景気ですから」

 先日、某企業の営業の方から聞いた言葉である。

 「こちらが提案しても、上が保守的で、結局何にも変わらない。公務員だからしょうがないのでしょうか」

 こちらはある国家公務員の方の言葉だ。

 「これで70社にフラれました。さすがにここまで来ると凹みますね」

 就職活動をしている某一流大学の学生のセリフだ。

 これらの言葉に共通しているのは「無力感」だ。自分だけがあがいてもしょうがない、ヤル気を見せても報われない。ならば、何にもしない方がいい。新しいアイディアなど出さず、余計なこともせず、無事にお給料をもらえればそれでいい。就職もせず、引きこもって、当座はしのいでいればいい――。

 今の日本には、こんな「無力感」が蔓延しているように感じる。なぜだろうか。

 心理学の有名な研究に「学習性無力感」と呼ばれるものがある。無力感を学習するのである。無力感は実は学習されるのである。

 たとえば、ネズミを檻に入れておく。檻には仕切りがあって、2部屋になっており、仕切りを飛び越えれば隣の部屋に行くことができる。ここで片方の部屋の床に弱い電気を流す。これはネズミにとっては不快なので、ネズミは走り回ったあげく、隣の部屋へ移る。隣の部屋には電気は流れていない。

 これを繰り返すと、やがてネズミは電気を感じると迷いなく隣の部屋に移るようになる。自分にとって利益になる行動を「学習」するのだ。

 そんなネズミに、今度はどちらの部屋にも電気を流すように条件を変えて実験を行なう。つまり、隣の部屋に移っても不快な状態が変わらないようにするのだ。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

職場で「不快感」を訴える社員が急増している。成果主義的な評価制度を導入する企業が増えたことにより、チームワークよりも自分の業績を重視する社員が増え、「ギスギス職場」が生まれているからだ。一方で、年功序列と終身雇用が崩壊しつつある職場では、職場の「世代間ギャップ」もかつてなく広がっている。こうした職場は結束やコミュニケーションを失い、社員の不快感は増していく。職場の不快感を取り除くには、制度的な「仕組み」を導入するだけでは不十分だ。部下1人1の「心」に効く、メンタル・マネジメントの方法論を上司が体系的に理解しておく必要がある。この連載では、日本の職場で起こりがちな「不快感」の臨床例を毎回わかりやすく紹介し、それを解決するメンタル・マネジメントの方法論を、社会心理学的な視点を織り交ぜながら、詳しく解説していく。

「組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」」

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