――そうした自己分析をもとに職種選びをするとき、発達障害の人が一番気をつけるべきポイントはどんなことでしょう?

借金玉 その職種の評価が「加点法」でされるか「減点法」でされるかはしっかり見極めた方がいいですね。

 加点法とは、とにかく「成果を出すこと」が評価される職種。営業職であれば「数字」、エンジニアであれば「成果物」のようなわかりやすい指標がある仕事は、加点法が多いと思います。

 減点法は成果が可視化しづらいため「ミスをしない」ことが評価される職種です。いわゆるホワイト企業の事務職は、ほぼこれに含まれます。

 僕が破滅した金融機関はミスが許されない、典型的な「減点法」の職種でした。

 一方、現在も続けている不動産営業はすごくやりやすくて、売ってなんぼの世界。完全に「加点法」です。小さな事務ミスをいくらやらかしても、営業成績さえ達成していれば何も言われませんし、プロセスも問われません。自分の裁量でできます。ADHDでもお客様と対面している時間は集中できますし、営業職って短期スパンで結果を競えばいいので、出力ムラの大きい僕の性質にすごく合っています。

 「事務ならできそう」「ホワイト企業だから」というようないわゆる世間一般の評価を基準にすると失敗するので、くれぐれも気をつけてください。

発達障害の僕が失敗から見つけた「向いている職業」「避けるべき職業」

失敗の「その奥」を見つめよう

――「解像度を高くする」って、面白い考え方ですね。失敗をほじくり返すのは誰でも嫌ですけど、それをしっかり見つめることで、別の世界が開ける。

 はい。僕のところに相談にくる人たちの中にも仕事で失敗するといきなり「自分は社会不適合者だ、死にたい」と言い出す人がいますが、それは自己分析が甘い。……と、こんな風に偉そうに語っていますが、僕自身も金融機関で失敗して初めて、「自分はこういう仕事が向いていないんだ!」って気づいたんです。

 多分、子どもの頃からの親父の呪縛なんですけど、僕の中に「まともにやらなきゃいけない」「ちゃんとやらなきゃいけない」っていう既成概念が強すぎて、「何がゴールなんだっけ?」と自分で考えて、分析する習慣がまったくできていなかったんだなと。それが、失敗を繰り返したおかげで、30歳を過ぎて少しずつできるようになってきた。僕にとってはすごく大きな変化――発達――だと思います。

 職種選びに限らず、物事を見る解像度が上がると、いろんなことが楽しくなります。たとえば、僕は自分が経営者になってコケた経験があるので、「雇う側」の気持ちがわかるんです。従業員を雇って事業を行うことがいかにすごいことか、苦労の多いことかが、具体的な場面場面で想像できる。

 だから、たとえ上司から理不尽なことを言われても、「彼も大変な立場だよな」って思える。謙虚になれるんですよね。

 うつのどん底に落ちた僕から見れば、社会でなんらかの仕事をしているサラリーマン全員、すごい人たちなんです。そういう視点で世の中を見ると、目の前の仕事が今より少し、楽しくなります。

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第4回 発達障害の僕が伝えたい「意識高い系」の人が人生から転落する危うさ(★10/11〜掲載)

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