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無視できない「あの音」に
認知行動療法で耳鳴り治療

井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-
【第112回】

 周囲に音源がないのに耳の中や頭の中で音が聴こえる「耳鳴り」。これだけ医学が進歩した今も、根本的な治療法はない。40代ごろから進行する老人性難聴に伴うことが多く、左右対称に「キーン」「シーン」など高音の耳鳴りがする場合は、これの前兆。

 日本では成人の15%が耳鳴りを経験し、その2割──約300万人が生活に支障があるという。外部音にまぎれる昼間はいいが、夜はそうはいかず不眠症やイライラ、抑うつ気分を誘発。重大な病気が隠れているのでは? という不安感も抑うつ気分に拍車をかける。

 慢性的な耳鳴りが重症化する背景には、脳(中枢)が耳鳴りを意識して選択する神経ネットワークを形成するため、という説が有力。となれば、ネットワークへの集中を断ち切る方法が有効であろう。実際、耳鳴りの対症療法として薬物療法と並び「マスカー療法」がある。別の音で耳鳴りを遮蔽(マスキング)する方法で、耳鳴り音に近い周波数の音やノイズを発生する補聴器型の機器を装着する。要はBGMに紛らわせ、耳鳴りへの過度な集中を相対的に減らすのだ。自分の好きな音楽を利用するのもいい。相性のよい音なら、機器をはずした後も一定の「遮蔽効果」が持続する。経験的に6割の患者に効果があるとされている。

 また6月、世界的な総合医学誌「ランセット」に新しい治療法に関する記事が掲載された。マスカー療法の後、専門家チームによる認知行動療法やリラクセーションセラピーなど複数の心理療法を追加するもの。耳鼻科でのカウンセリングに限られる通常治療より、耳鳴り重症度や生活の質が改善したほか、心理的苦痛が減少した。耳鳴りを「空気」のような自然の事象と認知し、音に集中、意識しないためのノウハウを身につけるわけ。ある種の順応療法である。オランダの研究者は、「新しい方法は重症度に関わらず効果があり、広く導入されるべき」という。

 ただ、精神疾患への心理療法すら未成熟な日本では耳鼻科で心理療法など夢の話。生活に支障が出るほど耳鳴りに悩まされている方は次善の策として、耳鼻科と心療内科双方を受診するのも一案だ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 

週刊ダイヤモンド編集部


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