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山崎元のマネー経済の歩き方

「人的資本」はどう運用するといいのか

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第244回】 2012年9月24日
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 人生を資産運用として捉えると、多くの人にとって最大の運用資産は、金融資産よりも自分自身の「人的資本」だ。人的資本は、将来の収入の割引現在価値であり、個人の株価のようなものだ。将来の収入を正確に予測することは難しいし、それを現在価値に引き直す割引率は、リスクを考慮して決めなければならないから、直接正確に計算できるものではないが、概念はおわかりいただけよう。

 人的資本をなるべく大きく育て、人生を通じてそこから潤沢に収益を得ることができれば、人生は豊かだ(少なくとも、物質的には)。

 人的資本の効果的な運用のためには、人生計画が必要だし、もっと範囲を狭めるとしてもキャリアプランニング(職業人生設計)が必要だ。今や、会社や役所のような組織に個人の人生全体を委ねることは安全でも効率的でもないので、この場合、市場で自分の「人材価値」がどう評価されるかに着目するのが現実的だ。評価するのは、会社やあるいは顧客のような、あなたの「取引先」だ(勤務先の会社も取引先の一つだ)。

 職業人の人材価値には「時間」が深く関わる。

 まず、人材価値は、ある仕事を確かにできるだろうという「能力」と、その能力を現実の仕事に使ったという「実績」の二つによって評価される。可能性としての能力だけでは、十分に(本人が満足するように)評価されないことがほとんどだ。多くの仕事で「能力」を養うのに時間が必要だし、さらに「実績」を作る時間をかけないと、人材価値が高まらない。人材価値で資格や学歴をイメージする人が多いが、30代以降なら実務経験のほうが価値が高い場合が多い。職業経験に穴があくなら、資格取得やMBA取得などは人材価値をむしろ下げる公算が大きい。

 また、人材価値には、これからどれだけの時間を使えるか、つまり人材の「若さ」の要素が関わる。仮に能力評価が全く同じ人物が2人いて、一方が40歳で他方が30歳なら、雇う側から見て、30歳の人物のほうが人材価値が高い。その能力をより長く利用できるし、経験の蓄積による能力改善も期待できるからだ。加齢に抗して人材価値をキープするためには、相当の努力が必要なのだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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