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インターネットは本を殺すのか

ネットの利便性と戦う「本」という存在

村瀬拓男 [弁護士]
【第1回】 2009年9月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
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日本でも始まった
書籍のデジタル化

 国立国会図書館長尾真館長が推し進める同図書館蔵書のデジタル化、そしてデジタル化された「本」のデータを広く利用しようとするプロジェクト「ジャパン・ブック・サーチ」が動きだそうとしています。

 国会図書館には納本制度があり、どの出版社にも日本で刊行する出版物すべてを同図書館に納本することが義務づけられています。つまり同図書館には原則として日本で出た本がすべて存在し、それらがデジタル化されれば、日本の本すべてを網羅したデータベースができあがるということになるのです。

 このデータベース(デジタルアーカイブ)を、ネットを通して利用者にさまざまな形で提供していこうというのが「ジャパン・ブック・サーチ」プロジェクトです。国会図書館自らと日本文芸家協会が検討を表明しており、出版社の団体である日本書籍出版協会も同じテーブルにつくことになるでしょう。

 この動きを誘発したのは、明らかにグーグル和解問題、「グーグル・ブック・サーチ」の存在です。グーグル和解問題と、国立国会図書館の蔵書デジタル化については、前回の連載『 「黒船」グーグルが日本に迫るデジタル開国 』で詳しく説明してきましたので、ぜひバックナンバーをご参照ください。

 アメリカでの訴訟は、来月に予定されている公聴会を経て和解が成立する見込みですが、日本ではいくつかの著作権者団体、出版社団体が和解からの離脱、異議申立てを表明しています。また海外においてもドイツの出版社団体が異議申立てを行ったようです。

 もっとも、離脱、異議申立てを行った日本の著者、出版社の主張を見てみると、問題としているのは、フェアユースの主張のもとにグーグルが無許可でデジタル化を推進したこと、出版慣行の違いを無視しアメリカでの出版慣行にのみ基づいた案となっていること、そして何らかの意思表示をしない限り和解案の中に組み込まれてしまうことなどです。

 つまりグーグルという「えたいのしれない」ネット企業が「本」のデータを支配することへの恐れや、アメリカンスタンダードがグローバルスタンダードのように扱われること、権利者に対し強引に意思表示をせまる一方的なやり方に対する反発によるものと言えるでしょう。

グーグル問題に反対した人も、
「本」のデジタル化に反対している訳ではない

 このようにグーグル問題について反対をしている人であっても、「本」のデジタル化そのものや、データベース化に反対しているというわけではないようです。これだけネット環境が普遍的になった現在、ネット利用、デジタル化の流れが止まるわけではないことは誰もが理解しています。デジタル化をやらなければならないのであれば、アメリカの企業であるグーグルに委ねるのではなく、日本のプレーヤーが主体的にやらなければならない、と考えて誕生したのが国会図書館長尾構想そして「ジャパン・ブック・サーチ」ということです。

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村瀬拓男 [弁護士]

1985年東京大学工学部卒。同年、新潮社へ入社。雑誌編集者から映像関連、電子メディア関連など幅広く経験をもつ。2005年同社を退社。06年より弁護士として独立。新潮社の法務業務を担当する傍ら、著作権関連問題に詳しい弁護士として知られる。


インターネットは本を殺すのか

グーグルの書籍データベース化をめぐる著作権訴訟問題に端を発し、日本でも書籍デジタル化の動きが起こり始めている。これらの動きを追いながら、今後本の世界がどのように変化していくのかを検証していく。

「インターネットは本を殺すのか」

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