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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

高配当なのに、なぜ低株価?
日本で上場第1号「伊藤園優先株」の謎

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第6回】 2008年7月10日
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 伊藤園の優先株【※注1】の株価が普通株の株価を下回って推移している。その理由を先日大学院の授業でディスカッションする機会があった。

 日本において上場している「無議決権高配当優先株」はこの伊藤園のものだけである。東証ではある一定の制約下においてのみ優先株の上場が可能であるものの、原則的には解禁されていない。伊藤園は現行で可能な枠組みの元で例外的に昨年9月に優先株を発行し、上場を果たしたものである。

 ただ、現在東証は種類株【※注2】の上場制度を鋭意準備中であり、今年の1月には種類株式の上場制度整備にむけた実務者懇談会の報告書もまとまっている。その第一号案件としてソフトバンクによる優先株の発行が実現するかと思われたが、同社は取りやめたと発表した。既存株主からの反応が芳しくなかったからであるが、既存株主がよい反応をしなかったことのひとつの理由は、伊藤園の先例がよくないことがあるであろう。

【注1】優先株とは?
配当金を優先的に受け取れる代わりに、経営への参加権(議決権)が制限される証券のこと。

【注2】種類株とは?
普通株と比べて、さまざまな権利が優先されたり制限されている種類の株のこと。上記「優先株」は種類株の中の1つ。

 伊藤園の普通株と優先株の株価推移を見てみると以下のとおりである。2007年9月に伊藤園の優先株は上場をしたが、それから現在まで、普通株が約45%の株価下落したのに対して、優先株は60%も株価が下落している(同期間の日経平均の下落幅は15%)。普通株でも十分に大きな株価下落であるが、これは最近の伊藤園の業績があまり芳しくないことを反映している。

◎伊藤園の「普通株」と「優先株」の株価推移
伊藤園の「普通株」と「優先株」の株価推移

 同社優先株は通常の条件では、受け取り配当額は普通株に比べて25%高い。それなら株価も25%高くなってもよさそうなものであるが、むしろ7月1日終値ベースでは、普通株が1699円である一方、優先株は1146円と約32%のディスカウントとなっている。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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