伊藤園の優先株【※注1】の株価が普通株の株価を下回って推移している。その理由を先日大学院の授業でディスカッションする機会があった。
日本において上場している「無議決権高配当優先株」はこの伊藤園のものだけである。東証ではある一定の制約下においてのみ優先株の上場が可能であるものの、原則的には解禁されていない。伊藤園は現行で可能な枠組みの元で例外的に昨年9月に優先株を発行し、上場を果たしたものである。
ただ、現在東証は種類株【※注2】の上場制度を鋭意準備中であり、今年の1月には種類株式の上場制度整備にむけた実務者懇談会の報告書もまとまっている。その第一号案件としてソフトバンクによる優先株の発行が実現するかと思われたが、同社は取りやめたと発表した。既存株主からの反応が芳しくなかったからであるが、既存株主がよい反応をしなかったことのひとつの理由は、伊藤園の先例がよくないことがあるであろう。
【注1】優先株とは?
配当金を優先的に受け取れる代わりに、経営への参加権(議決権)が制限される証券のこと。
【注2】種類株とは?
普通株と比べて、さまざまな権利が優先されたり制限されている種類の株のこと。上記「優先株」は種類株の中の1つ。
伊藤園の普通株と優先株の株価推移を見てみると以下のとおりである。2007年9月に伊藤園の優先株は上場をしたが、それから現在まで、普通株が約45%の株価下落したのに対して、優先株は60%も株価が下落している(同期間の日経平均の下落幅は15%)。普通株でも十分に大きな株価下落であるが、これは最近の伊藤園の業績があまり芳しくないことを反映している。
◎伊藤園の「普通株」と「優先株」の株価推移 |
同社優先株は通常の条件では、受け取り配当額は普通株に比べて25%高い。それなら株価も25%高くなってもよさそうなものであるが、むしろ7月1日終値ベースでは、普通株が1699円である一方、優先株は1146円と約32%のディスカウントとなっている。