自民党総裁選は、安倍晋三元首相が決戦投票で石破茂前政調会長に逆転勝利し、間近に迫った国政選挙の“顔”となった。

 果たして、安倍新総裁によって、自民党は「近いうち」の解散・総選挙を勝ち抜いて政権を奪還できるのか。それは、新しい党体制と直面する政治課題に対する明確な方針が示されなければわからない。

安倍内閣の失敗を生んだ2つの要因

 安倍氏は6年前の政権担当によって何を学んでいるか。今回の総裁選挙でもその体験から学んだことを強調していたが、それが何であるかを具体的に語っていない。

 ただ、安倍氏は、首相として、日本の官僚支配に真っ向から挑戦したほとんど唯一の人である。彼ほど行政改革や公務員制度改革、あるいは“政治主導”に本気に取り組んだ首相はいない。

 鳩山由紀夫元首相もその熱意は変わらなかったものの結局は不首尾に終わった。鳩山氏は最近、首相になるまで、首相官邸における重要政策の決定のからくりについて「よく知らなかった」と述べている。

 安倍内閣の失敗もおそらくそれと同じ。双方ともに官僚支配の統治構造の強靭さを甘く見ていたのだろう。

 安倍氏の志が変わらず、前回の体験から多くを学んでいたとしたら、日本の統治構造の改革にかなり大きな期待を持つことができる。

「改革無くして成長無し」と言われるように、改革と成長は一体のもの。この成長重視の方向も正しいし期待もできる。

 前回の経験不足の未熟さが理解できるとしても、もう1つ大きな挫折原因があったと私は思っている。

 それは政治課題の間口を広げ過ぎたこと。

 将棋に“多面指し”の指導将棋というものがある。1人のプロが、5人、10人のアマチュアを相手に将棋を指す。棋力に大差があるからそれでも圧倒的にプロは勝つ。