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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

日本のものづくりを韓国や中国など
東アジアの分業構造に組み入れるべき理由

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第13回】 2012年10月1日
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なぜ日本企業の韓国への
投資は増えてるのか

 日本企業の韓国への投資が増えている。先日、資料を見ていて気付いたことだ。なぜ、今の時点で韓国への投資が増えているのだろうか。いろいろな要因が考えられるが、私の目を引いたのは東レ、帝人、住友化学といった企業の投資が増えていることだ。

 東レや住友化学は、韓国の工場で生産した製品を誰に売るだろうか。詳しく検証したわけではないが、すぐに思い浮かぶのは、サムスン、LG、現代などの韓国企業である。韓国企業も日本の優秀な素材を求めているはずだ。彼らの急速な成長を考えれば、日本の素材メーカーにとっても、これは世界シェアを拡大する絶好のチャンスに違いない。

 化学や鉄鋼などの素材メーカーは、日本のものづくりを底辺で支える黒子のような存在であった。日本の素材の品質は素晴らしい。そうした素材を利用できるからこそ、日本の自動車やエレクトロニクスは、世界で有利な競争を進めることができた。

 素材メーカーは、ある意味では非常に国内志向が強い存在であった。日本国内の大きな市場が経営の基盤でもあった。もちろん素材メーカーも海外に目を向けていたことは事実だが、設備のコストを考えると、国内市場にその多くを頼らざるをえなかった。

 こうした状況は大きく変わりつつある。ものづくりが日本国内からアジアの近隣諸国に広がるなかで、日本国内市場だけで素材メーカーが生き残ることは難しいからだ。前々回グラビティ・モデルの話をしたが、素材の分野でも距離は重要である。遠方の欧米市場で素材の売上を拡大させるのは難しいが、距離の近いアジアで販売を拡大することは十分に考えられる。

 欧米にはすでに、強力な競合会社が多く存在する。アジアでは、まだ地場の素材メーカーはそれほど育っていない。日本の素材メーカーの有力な顧客であった日本企業がアジアでの展開を拡大させれば、それへの対応ということでもアジアへの輸出や現地での生産を強化せざるをえない。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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