日本の国債が、近い将来、ギリシャ、イタリア、スペインの国債のように「暴落」するという議論をよく聞く。日本の政府債務残高は、GDPに対してギリシャよりも大きい。しかし、それだけで、危ないと考えるのは短慮だ。

 日本には、ざっと1500兆円に及ぶ個人金融資産があり、これが、預金、保険、年金などを通じて、一応は信用リスク上安全で、安定した利回りを提供するわが国の国債への投資に向かっている。

 短期金利が共にほぼゼロ金利である米国やドイツよりもわが国の長期国債の利回りは低い。同時に、わが国はデフレに悩んでいる。わが国の投資主体による日本円建てで信用リスクが(ほぼ)ゼロの確定利回りを提供する金融商品、つまり日本国債に対する需要が大変旺盛であることがわかる。

 一般に、大き過ぎる財政赤字残高の弊害は、(1)長期金利の上昇による投資・消費の低迷、(2)通貨への信認低下としてのインフレ、さらに(3)自国通貨安による国民の購買力低下だ。

 では、現実を素直に見よう。これらはいずれも起こっていない。特に、インフレと円安に関しては、むしろその逆のデフレと円高であることこそが目下のわが国経済にとって大きな問題だ。

 主に財務省による「日本の財政赤字は大変だ!」という増税のためのキャンペーンの効果によるものと思われるが、わが国の累積財政赤字の残高は「大き過ぎる」という見解が常識になっている。

 しかし、経済(インフレ率)と市場(金利と為替レート)の現状を見る限りでは、むしろ、財政赤字の残高は足りないのではないか。わが国は、潤沢な貯蓄を持つ一方で、社債など、国債に対して代替的な金融商品の市場が薄い。政府の債務残高の供給は、需要に対して過大ではなく、むしろ過小なのではないか。巨額の財政赤字と低金利・デフレ・円高の共存という常識的には矛盾する現状を解釈する鍵はこの辺にあるのではないか。

 もうしばらくの間、銀行預金にはお金が集まるだろうし、銀行にとって「貸せる!」貸出先は乏しい。預金を背景とした銀行の国債購入は続くだろう。