ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

復興予算の流用と女川町のさんま祭りに見る
政治家・官僚と被災者の矜持の差

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第203回】 2012年10月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 既に様々なところで報道されているように、政府の各省庁が多額の復興予算を被災地の復興以外のために使っていることが明らかになりました。その一方で、ある被災地はがれき受け入れの恩返しをしようとしています。一体この矜持の差は何なのでしょうか。そして、この事実から、日本の本当の強みは何であり、日本の復興のためには何が必要かが明らかになるのではないでしょうか。

なぜ復興予算の流用が起きるか

 各省庁が復興予算をどのような復興以外の用途に使っているかは、既にたくさんのメディアが報じているので、ここではその詳細には触れませんが、復興につながらない研究開発、税務署の改修、アニメの紹介、果ては核融合の研究にまで使っているというのには、もう空いた口が塞がりません。

 その一方で、例えば被災地の中小企業の復興支援のためのグループ補助金については、被災地での需要が大きいにも拘らず予算額が少ないため、復興以外の用途にはたくさんの予算が流れているのに、被災地からの申請の半分強の金額しか対応できていないという本末転倒が起きてしまっています。

 ただ、こうした官僚のやり口は今回が初めてではありません。予算要求する際にシーリングなどの制約が大きくて十分な予算を獲得できない中、世間で流行りの政策イシューについては予算を獲得しやすい(予算の特別枠ができるし、予算獲得の口実ができる)ので、官僚が得意な屁理屈を並べてその特別枠から予算を確保するというのは、これまで何度も行われてきました。

 例えば、過去には、ITがブームのときはどの役所もIT絡みの予算をたくさん要求して獲得していました。環境が流行りになると、今度はどこもかしこも環境絡みの予算を取りました。即ち、官僚の側からすれば、被災地復興もそれらと同じように予算を獲得するには絶好の政策イシューだったのです。

 ただ、過去のITや環境などのときと今回では罪の重さがまったく違うことに留意すべきです。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧