先週、このコラムで、今年タイを訪れる中国人の年間訪問者数がおそらくはじめて200万人という記録を作るだろう、と書いた。その勢いと熱気は、バンコク・スワンナプーム国際空港でも十分に感じられる。

 18年ぶりのタイ訪問で一番痛感したのは、中国の存在感の急増だ。空港内では、ショッピングの案内やビザ申請の案内などの中国語表示が目立っている。5、6年前にスワンナプーム国際空港でトランジットしたことが数回あったが、そのときには見られなかった光景だ。とくにショッピングの案内は非常に工夫されており、どれぐらいの消費金額に達したら、景品としては何がもらえるのか、詳しく案内されている。

充実してきた
中国人向けのサービス

 市内に行くと、もともと華僑が多い町だけに、漢字の表記が比較的多い。しかし、現在はさらに多く見られるようになった。今度の宿泊先は、ラチャダーピセーク通りとラーマ9世通りの交差点付近にある。地下鉄(MRT)ラマ9世駅からわずか1分しか離れていない。

 スーパーマーケット「テスコ・ロータス」と並ぶショッピングセンター「フォーチュン・タウン」の中に、私たち(私と日本人数人)が宿泊するホテルが入っている。ホテルのカウンターがショッピングセンターの一角をなすという構造になっており、コーヒーショップもホテル専用かショッピングセンターとの共用なのか不明だ。口にはしなかったが、最初、なぜこんなホテルを予約したのか、やや不満だった。

 快いBGMが流れるなかで、カウンターでチェックイン手続きをし始めると、冷たいジュースとクッキーが運ばれてきた。さらにしばらくすると、BGMのバイオリンの演奏がなんと中国の人気曲「月亮代表我的心」(月はわが心)に変わった。「あなたをどれほど愛しているか。 どれほど思っているか。 分からないの?」と思わず口ずさんだ。それでもBGMだと思い込み、それ以上、何も考えなかった。