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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

優等生ゆえの「守り」のジレンマ?! トヨタ・リコール問題に学ぶ、「肉食系CSR」のススメ

――企業社会も弱肉強食。だからこそ、「攻め」の姿勢を

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第11回】 2010年2月23日
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 日本経済の牽引役で、エコプロダクツの代表格であるプリウスを製造するなど、日本企業の優等生であるトヨタ自動車が、リコール問題に揺れています。ダイヤモンド・オンラインにおいても、この件に関する記事は既に多く取り上げられていますので、ここで詳しく述べることは省きますが、これらの記事で共通して述べられているのは、「初動対応の遅れ」です。「トヨタほどの企業がなぜ?」と考えてしまいますが、優等生ゆえのジレンマに陥っていたのかもしれません。

 米国においてトヨタは、米国車に比べ安全で壊れにくいという安全神話を築きマーケットを獲得してきました。また、低燃費であることや、プリウスに代表されるハイブリッド技術など、新しい時代の要請である環境面においても消費者のニーズを的確に捉えてきたことが、トヨタ神話を更に強固なものにしてきたのです。また、アカデミー賞など、さまざまなアワードの会場にプリウスで現れることが米国セレブのステイタスのようになり、それが大きくメディアで取り上げられることで、トヨタ神話のイメージは更に助長されて行きました。

 今回のフロアマットやブレーキの問題などは、実はリコールではなく、違う方法でもよかったのではないか、という記事も見受けられます。しかし、消費者のトヨタへの期待値は、トヨタが優等生故にとても高いものになっており、完璧な対応が求められていたのだと思います。高い信頼ゆえの責務からか、トヨタにとっては、不具合を認めてこれまでの高い信頼を失うか、高い信頼を失うことを恐れしばし様子を見守るか、という優等生ゆえの「信頼のジレンマ」に陥っていたような気がするのです。

学生アンケートに表われていた
期待と現実とのギャップ

 しかしながら、これだけでは、初動対応の遅れは説明がつきません。株式会社ジェイ・ブロードが「就職ウォーカーNet」に会員登録した全国の主要大学生に対し、「環境への取り組み」「消費者への情報公開」「従業員への配慮」の3点から企業のCSRイメージについて実施したアンケートには、初動対応の遅れにも繋がる興味深い結果が表れていました。

 「環境への取り組み」についてのベスト3は、【1位】が食品メーカーのカゴメ、【2位】がトヨタ自動車、【3位】がパナソニックとなっており、さすがにこの分野においてトヨタは、感度の高い学生からも高評価を得ています。しかし、その他の項目については、意外な結果だったのです。

 「環境への取り組み」で【1位】になったカゴメは、「消費者への情報公開」でも【1位】、「従業員への配慮」では【2位】といずれも高い評価を得ています。また、「環境への取り組み」で【3位】になったパナソニックも、「消費者への情報公開」で【3位】、「従業員への配慮」でも【3位】と、安定した高い評価を得ています。

 では、「環境への取り組み」で【2位】になったトヨタはというと、「消費者への情報公開」では【14位】、「従業員への配慮」でも【9位】と、大きく順位(評価)を落としています。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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