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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

刑務所誘致で人口を増やした地方都市、
人口水増しがバレて市になりそこなった町

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第55回】 2012年10月23日
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地域の生き残り策で刑務所を誘致?
人口の増加に賭けた山口県美祢市

 6年ほど前、地域の生き残り策として刑務所誘致を掲げ、成功した地方都市を取材したことがある。山口県美祢市である。市役所に赴き、担当者に「なぜ、刑務所誘致で地域活性化なのか?」と問いかけ、返ってきた答えに唸ったことを鮮明に覚えている。意表を突かれてしまったのである。

 「雇用や市内業者の参入といった地域経済への波及効果もありますが、何と言っても人口が確実に増えるからです。刑務官やその家族が市内に居住してくれますし、たくさんの受刑者も統計上、市の人口に算入されます。これが当市にとって一番、大きい。地方交付税の算定のべースになりますので、歳入増につながりますので。我々の試算では……」

 石灰石や大理石の産出地として知られる美祢市は、もともとは炭鉱の街だった。しかし、炭鉱が次々に閉山し、地域の輝きを失うようになっていった。過疎化と高齢化が急速に進み、最盛期に4万人を超えた人口は2万人を割り込むまでに。定住促進が地域の喫緊の課題となっていった。起死回生の策として浮上したのが、刑務所誘致だった。

 当時、刑務所は一般的に「迷惑施設」の1つと考えられていた。地域の治安への影響を不安視する傾向にあったからだ。もちろん、根拠のない漠とした不安にすぎないが、受け入れに名乗りを上げる奇特な(?)地域は皆無に近かった。

 そんななかで、美祢市は「迷惑施設」として敬遠されていた刑務所に目を付けた。最大のポイントが人口だった。おそらく、役所内に柔軟な発想をする相当な知恵者がいたのであろう。

 地域(自治体)の存続にとって最も重要なのが、住民の存在である。と言うよりも、住む人たちがいるからこそ、地域(自治体)は成り立つ。それゆえに、いずこの自治体も、人口を何とかして増やそうと必死なのである。

 人口が行政のあらゆる施策のべースとなっている。それだけに、その数を正確に把握しなければならないが、現実はそう簡単ではない。特に、最近はややこしさを増している。

 行政施策の基礎資料となる自治体の人口は、5年に1度(調査年の10月1日)、全国一斉に実施される国勢調査での数値を指す。これを「法定人口」と言う。直近の国勢調査は2010年に実施された。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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