「明確な1つの国」とは捉えられない
中国はなぜこんなにわかりづらいか?

 最近、中国に関する質問が圧倒的に多い。その背景には、中国という国がとてもわかりにくいことがあるのだろう。

 まず中国という国を、日本のように明確な1つの国と考えるのは必ずしも適切ではない。広大な国土に、世界最大の13億人の人口を抱えており、90%以上を占める漢民族のほか、政府が公認しているだけで55の少数民族を持つ多民族国家だ。

 しかも経済発展に関しては、高成長を享受した沿岸部と、成長から取り残された農村部などが混在し、あたかも「1つの国の中に、いくつかの国が存在する」かのような、という表現が事実を的確に言い当てているかもしれない。

 もう1つ、我々にわかりにくいのは政治体制だ。基本的には、1949年の中華人民共和国の成立後、共産党が一党独裁体制をとっている。中国は、現在でも共産主義の国でありながら、資本主義経済の象徴とも言うべき株式市場を持っている。
そのため、政治の教義は共産主義である一方、経済活動の多くは市場のメカニズムに依存する複雑な仕組みになっている。

 ただ、現在でも国有企業やかつての国有企業、さらには地方政府が、経済の多くの分野で重要な役割を果たしている。そうした事情がわからないと、中国のことを理解するのは難しい。

 中国は、1978年以降、当時の鄧小平が進めた改革開放路線によって、共産主義的な計画経済から次第に市場型経済へと移行して行く。1989年の天安門事件の発生などによって、一時的に市場経済への歩みが止まることはあったものの、経済の効率化などもあり、中国経済は本格的な経済成長への道を歩み始めることになる。

 1990年代中盤以降は、日本から“世界の工場”の地位を勝ち取り、今や世界第2位の経済大国へと上り詰めた。特に、リーマンショック後、世界経済を下支えした国としてのプレゼンスは重要だ。