ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
山田久の「市場主義3.0」

わが国における「市場主義3.0」実現の道筋

山田 久 [日本総合研究所・調査部長・チーフエコノミスト]
【第8回・最終回】 2012年10月31日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回、わが国における「市場主義3.0」の具体的な姿として、経済システム面、および、社会システム面における労使関係システム(雇用システム)について述べた。最終回となる今回は、前回からの続きとして、社会システムにおける社会保障システムのあり方を論じたうえで、わが国で「市場主義3.0」モデルを実現するための、政治プロセスの改革についてふれる。

成長促進的な「社会保障
システム」を構築する

 前回みてきた「労使関係システム(雇用システム)」の構築にあたって、密接不可分の役割を果たすのが「社会保障システム」の改革である。従来の社会保障システムは、「残余的な福祉」を基本にしてきたが、人口高齢化の進展に従って近年では「引退世代の生活保障」という性格を急速に強めている。ただし、いずれにしてもそれは、社会的弱者を「市場原理から守る」という基本的発想に基づいている点は変わっていない。

 しかし、「市場主義3.0」モデルにおける社会保障システムは、「市場原理に適応する」ためのものという要素を強めなければならない。より踏み込んでいえば、社会保障を経済成長に抑制的なものでなく、経済成長を促進するものとする必要がある。

 この点に関し、主要OECD諸国における社会保障と経済成長の関係を検証してみよう。経済成長率(1997~2009年)を、①社会保障関連支出のGDP比、および、②社会保障関連支出に占める現役世代のための支出(家族政策および積極的労働市場政策)の割合を説明変数として回帰分析を行った(図表)。(t値は数値が大きいほどパラメータの信頼性が高く、p値とは、どこまで低い確率水準でパラメータの信頼性が失われることはないといえるかを示す統計値)

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

山田 久 [日本総合研究所・調査部長・チーフエコノミスト]

やまだ ひさし/1987年京都大学経済学部卒業、2003年法政大学大学院修士課程(経済学)修了。住友銀行(現三井住友銀行)、日本経済研究センター出向等を経て93年より日本総合研究所調査部出向。同経済研究センター所長、マクロ経済研究センター所長、ビジネス戦略研究センター所長等を経て11年より現職。専門はマクロ経済分析、経済政策、労働経済。著書に「北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか(共著)、「市場主義3.0」、「デフレ反転の成長戦略『値下げ・賃下げの罠』からどう脱却するか」、「賃金デフレ」など。


山田久の「市場主義3.0」

わが国は、実質成長率の低下、デフレの長期化、雇用情勢の悪化などの構造問題に直面し、閉塞感が強まっている。その原因は、戦後に形成された経済社会システムがすでに賞味期限切れを迎えているにもかかわらず、新たな時代環境を先取りした国家ビジョンが構築できないままに、政策議論が混乱し続けていることに求められよう。本連載では気鋭のエコノミストである日本総研の山田久調査部長が、大震災後、欧米ソブリン危機後のわが国が目指すべき「新しい成長社会」の具体的なあり方を探っていく。

「山田久の「市場主義3.0」」

⇒バックナンバー一覧