物作りにおいては誰にも負けないと自負している日本企業がこの頃、元気がない。とくに、ソニー、パナソニック、シャープなど「メイド・イン・ジャパン」を象徴する大手電機メーカーが昨年度、過去最大の赤字に陥り、三洋電機に至っては空中分解してしまったかのように、吸収合併されたりして、ブランドもなくなってしまった。日本の基幹産業をなすこれらの企業が直面する厳しい局面を、メディアが「過去最悪」、「巨額最終赤字」、「壊滅的」といった言葉を使って表現する。
伝えきれないことを
伝えたい
活字メディアも映像メディアも競って日本企業が再起できるのかを議論・分析する特集を組んだりして、その報道に力を入れている。NHKもその例外ではなく、10月27日、28日の2夜連続でスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」を放送した。27日は「第1回 岐路に立つ“日の丸家電”」、28日は「第2回 復活への新戦略」と題する番組だった。
NHKは2夜連続のこの番組で、ついこの間まで世界を席巻していた日本の製造業がなぜこうした状況に陥ったのか、サムスン(韓国)、ハイアール(中国)など強力な海外のライバルメーカーはどうやって力をつけたのか、そして、「どうしたら逆襲のシナリオが描けるのか。この20年あまりの各社の戦略・時代の変化を見つめ直しながら」、日本の製造業の行方を考えようとした。
2002年以降、テレビ制作関連の仕事を辞退するようになった私は、NHKからの要請でその第2夜目の番組にあるハイアール関連の取材に協力した。しかし、放送枠や時間配分などいろいろな事情により、取材した内容の多くが取り上げられないままになってしまった。非常に残念に思っている。
熾烈なビジネス競争の現場を見てきた一ジャーナリストとしては、世界のビジネス現場で何が発生しているのかを読者に伝える義務を強く感じている。数回に分けてこれまでの私が取り組んできたテーマなどに沿って、ご報告しようと思う。今回のレポートは、その第1回とする。