ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

『名ばかりMBO』のツケ?
退任要求された「すかいらーく」創業社長

――“創業者一族の都合”による、安易なMBOに警鐘

永沢 徹 [弁護士]
【第41回】 2008年8月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 外食チェーン大手「すかいらーく」の横川竟(きわむ)社長が、大株主である投資ファンド2社から業績不振を理由に退任要求を突き付けられている。これに対し横川社長は退任を拒否。徹底抗戦の構えを見せたことで、両者は完全に対立。さらには同社の労働組合まで社長退任を支持する事態にまで発展した。ついには、8月12日に開催される臨時株主総会で、社長解任が実行される見通しとなっている。

 なぜこのような事態に陥ってしまったのか――。まずは、横川社長と大株主の投資ファンドの関係について説明しよう。

 横川竟氏は、創業者である「横川4兄弟」の1人。1962年、同社の前身である「ことぶき食品」というスーパーからスタート、1970年にすかいらーく第1号店(国立店)を出店し、レストランへ業態変更。時代の流れに乗り、全国に出店を拡大。ファミレスチェーンの草分け的存在となった。その後も、「ジョナサン」「バーミヤン」「藍屋」「ガスト」etc・・・と続々新ブランドを設立。現在では、「小僧寿し本部」も傘下に収め、同社を日本を代表する外食チェーングループに育てた中心人物である。

 そして今回、退任要求を行なった投資ファンドというのは、野村プリンシパル・ファイナンス(以下、野村プリンシパル)と英投資ファンドであるCVCキャピタルパートナーズ(以下、CVC)の2社。野村プリンシパルは61.5%、CVCは35.6%、両社合わせて97%もの株式(議決権ベース)を保有する、すかいらーくの大株主である。

騒動の原点となった
2006年の「MBO」

 なぜ両社がここまで圧倒的多数の株式を保有しているのか。それは、2006年にすかいらーくが実施したMBOに協力し、出資したため。当時、すかいらーくは東証1部に上場しており、5万人もの株主を抱えていた。しかし、外食産業の市場縮小と競争激化により、同社の業績が悪化。抜本的な改革を行なうためには非上場化(上場廃止)するしかないとして、横川竟氏をはじめとする経営陣が中心となって「MBO」を提案。その計画に野村プリンシパルとCVCが賛同し、出資したわけである。この「MBO」が今回の騒動の“原点”となっているのだ。

 MBO(マネジメント・バイアウト)はその名の通り本来は「経営陣による買収」である。日本でも90年代後半から浸透し始め、主に、グループからの独立やのれん分けなど、「事業再編」を目的として利用されることが多かった。しかしその後、状況が変化している。「買収防衛策の一環として」、または「経営の自由度を高めるため」などを理由に、上場企業が非上場化するための手段として使われることが多くなってきているのだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

100年に一度の経済危機に見舞われ、企業を取り巻く環境は大幅に悪化。“企業乱世”ともいえる激動時代の経済ニュースを、弁護士・永沢徹が法的な視点を加えながらわかりやすく解説する。

「弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く」

⇒バックナンバー一覧