竹島・尖閣諸島をめぐる韓国・中国と日本の緊張関係は、今後長い期間にわたって、日本の課題であり続けそうだ。

日本の存在感と国益を守りつつ、近隣諸国との紛争を最小限に抑えるためにも、しばしば指摘される日本の「外交下手」は、克服する必要があるだろう。

たとえば韓国は、竹島問題に関して、数多くの外交の場で、多面的・多層的なアピールを粘り強く続けている。対して日本の現状はどうだろうか? これからの日本には、何ができるだろうか?

本記事では、ある大規模国際学会の舞台の表と裏を通じて、「文化(広報)外交」(Public Diplomacy)のさまざまな側面を紹介する。

大人から子どもまで
すべての人々に開かれる国際学会にて

AAASは日本に対して、概して好意的だ。ジャパンパビリオンの様子が、2013年年会の広報ページに掲載されている Photo by Yoshiko Miwa
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 ここ数年、毎年2月、私はアメリカかカナダに、1週間ほど滞在している。AAAS(アメリカ科学振興協会)の年会に参加し、取材を行うためだ。

 AAASは、科学雑誌「Science」(注1)の発行元として知られている。年間約1億ドルの予算規模を持ち、多数のスタッフを擁する世界最大のNPOでもある。活動範囲は科学そのものだけでなく、社会問題の解決・国際協力など、社会と科学に関連する広い分野にまたがる。アメリカの組織ではあるが、影響力は世界中に及んでいる。

 AAASの年会は、5日間にわたって開催され、すでに180回近い開催実績がある。世界中からやってくる8000人以上の来場者には、研究者・科学政策に関わる人々・科学を伝えることに関係する人々が目立つけれども、一般の科学愛好家も多い。参加資格は特にない。必要な条件は、参加費を支払うことだけだ。

 年会のプログラムは、多数の講演と会議、さらに展示から構成されている。

(注1)
研究者たちが「論文を載せられたら」と憧れる3大科学雑誌「Cell」「Nature」「Science」は、頭文字を取って「CNS」と呼ばれている。「CNS」は、「いつかはCNS」「目指せCNS」のように使用される。