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China Report 中国は今

上海の日常に忍び込んできた
軍靴の響きに不安を抱える市民たち

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第111回】 2012年11月2日
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 このごろ、上空の騒音が気になるようになった。宝山製鉄所で知られる上海市北部の宝山区には、中国人民解放軍の海軍飛行編隊が管理する大場飛行場がある。どうやらここを離発着する軍用機が増えたようだ。

 人民解放軍の主な幹部人事も入れ替わった。中国国防省は10月25日、人民解放軍の新人事を発表、総参謀長に房峰輝・北京軍区司令官(61歳)、総政治部主任に張陽・広州軍区政治委員(61歳)など4名が、空軍トップの空軍司令官には馬暁天・副総参謀長(63歳)が就任すると伝えた。

 これまで軍高官といえば70歳前後が相場だったが、いずれも60歳を過ぎたばかりの壮年だ。上海市民はこの人事に、影響力を維持したい胡錦濤氏の思惑を読み取る一方で、空軍と海軍の強化を「日本との開戦準備だ」に結びつけている。

 上海市民の日常生活にも変化が現れている。テレビ番組は戦場モノが従来に比べて一段と増えた。今や複数のチャンネルで放映される戦争ドラマには、日中戦争をテーマにしたものもある。熟年層はこれに見入り、また、若い世代はネット上で尖閣交戦を描いたゲームサイトに興奮する。

 昨今は新聞もよく読まれるようになった。日中関係の先行きを暗示する刺激的なタイトルに、年齢問わず市民は敏感に反応する。

 ご町内の夫婦げんか、その仲裁の言葉すら変わった。双方が危うくつかみ合おうとするその瞬間、背後から上がったのは「殴るなら日本人を殴れ」という冗談まじりの野次だった。「我々の敵は誰なのか、考えてみろ」という意味だ。

反日はフェードアウトしたのか?
上海市民を襲う「新たな不安」

 日本では「反日の動きは落ち着いたようだ」「日本で報道されるような危険はないようだ」という楽観的な見方が強い。反日デモから1ヵ月以上も経った上海では、確かに騒ぎは収まっている。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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