景気減速に尖閣問題が追い打ち
“泣き面に蜂”の日本企業

 10月半ば、北京市内にあるトヨタ自動車の販売店を訪れた。夕暮れ時にもかかわらず、店内は照明もつけられず薄暗い。開店休業の状態になっていた。

 手持ち無沙汰な様子の販売店オーナーに声をかけたところ、「毎月100台は売れていたのに、10月は2台しか売れていない。このままでは資金繰りが厳しいが、トヨタからは対策も支援も示されていない」と嘆き節が返ってきた。

 実際に、9月中旬の反日デモ以降の日系自動車メーカーの中国販売実績は壊滅的だ。9月単月では、トヨタ4万4100台(前年同月比48.9%減)、日産自動車7万6066台(同35.3%減)、ホンダ3万3931台(同40.5%減)と大幅に落ち込んだ。

「鉄鋼業界への影響は、極めて深刻だ。中国における鋼材の供給過剰の状態が続いていたところに、尖閣問題が追い打ちをかけた」

 長期化の様相を見せる日中間の対立に、大手商社首脳からは、そううめき声が漏れる。「日本車の販売量が下がれば、それだけ日の丸鋼材の販売量も減る」(同首脳)からだ。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎経済調査本部長は「産業の裾野が広い自動車の減産のインパクトが出ている。ただでさえ、日本経済は、景気後退の瀬戸際にある。尖閣問題を年内に収束させなければ、不況に突入しかねない」と警鐘を鳴らす。