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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

固定資本の老朽化が急速に進む日本、
純投資がマイナスの国に未来はない!?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第49回】 2009年12月12日
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 12月9日に発表された7~9月期のGDP第2次速報値では、実質GDPの前期比年率伸び率が下方改定された。11月に発表された第1次速報値では4.8%増であったが、これが1.3%増に改定された。改定の原因は、実質企業設備投資の対前期比伸び率が、1次速報値のプラス1.6%からマイナス2.8%に改定されたことだ(*1)

 1次速報値がその後修正されることはこれまでもあったが、これほど大きな改定は、初めてのことである。単に数字の上で変更があっただけではない。この改定は、現在多くの人が大きな関心を持っている事柄について、重大な認識の違いをもたらすものである。

 鉱工業生産指数は、09年第1四半期に底を打ってから回復している(【図表1】参照)。この事実を企業がどう判断するかは、設備投資の伸びに現れるだろう。これに関して、2つの解釈がありうる。

 第1は、「生産の伸びは本格的な回復を示すものであり、したがって将来も続く」という解釈だ。企業がこのように判断するなら、企業の設備投資判断に大きな変化が生じ、これまで抑制していた設備投資を増加に変更するだろう。第1次速報値における実質設備投資の伸びは、これまでのマイナスからプラスに転じたことになっていたので、これが率直な解釈である。

 第2は、「生産の伸びは政府の購入支援策などによって下支えされた見かけ上のものに過ぎない」との解釈である。つまり、回復は一時的なものに過ぎず、今後の生産の見通しは不確実だとする見方である。企業がそう判断するなら、設備投資に対して、慎重な態度を続けるだろう。第2次速報値を見ての率直な解釈は、これである。

 私は、第2の解釈をしていた。しかし、11月に出たGDP統計の1次速報値で設備投資の伸びがプラスに転じた事実は否定できなかった。そこで、「GDP統計で見る実質民間企業設備は、7~9月期の対前期比年率換算では6.6%の増となったが、これはそれまでの1年間に大きく減少した反動だ。対前年同期比では、マイナス16.6%という大きな落ち込みになっている」と書いて、雑誌編集部に送ったばかりのところだった。その直後に第2次速報値が公表されたので、送ったばかりの原稿をあわてて回収して修正した。

 私の場合は原稿を修正するだけで済んだのだが、実際に取引を行なっている人のなかには、第1次速報値を信用して日本経済の先行きに対する見込みを楽観的に考え、それに基づいて取引を行なった人がいたかもしれない。そうした人は、改定によって実質的な損害を被ったことになる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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