
「今の仕事、このままでいい?」「離婚したほうがいい?」現代人は、答えの出ない問いに悩み続け、選択できずに時間だけが過ぎていく。そんな決断できない我々に必要なのは、合理的な判断ではなく、言葉の使い方だ。言語学者が提唱するマジックフレーズで、あなたの悩みが解決するかもしれない。※本稿は、堀田秀吾『決めることに疲れない 最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
「やる気が出ない」とこぼしているうちに
本当にそうなってしまうのはなぜ?
私たちは、言葉の力に引きずられる形で決断してしまうことが珍しくありません。「やる気が出ない」「面倒だ」などと口に出したり、考えたりすると、「自己成就予言」と言って、意識的、あるいは無意識にその通りにことが進んでしまうと社会学者のロバート・キング・マートン(編集部注/元コロンビア大学教授)の研究で明らかになっています。
自分で、「私はこういう人間だ」と言ってしまえば、脳は「なるほど。あなたはそういう人間なんですね」とアシストしてしまうのです。人間は想像以上に言葉に左右される生き物。催眠術も言葉による暗示・誘導以外の何ものでもないそうです。
そのため、「自分はダラダラしてしまうダメ人間だ」と思い込んだり、言葉にしたりすると、脳は悪い方向へとアシストし、いつまで経ってもソファーでゴロゴロしてしまう人間になってしまいます。言葉というのは、それほどまでに脳と関連性を持つものなのです。
実際、言葉のニュアンスによって、人間の意思決定は変わってしまいます。
人間の意思決定における心理的要因を説明する行動経済学の理論に、「プロスペクト理論」と呼ばれるものがあります。「人は損失を回避する傾向があり、状況によって判断が変わる」というものです。