株主総会2025#16Photo:AFLO

2023年の株主総会で賛成率が63.22%に低迷したのが、八十二銀行の松下正樹頭取だ。昨年は選任議案の対象外だった松下頭取が、今年の株主総会で再び選任の是非が問われる。特集『株主総会2025』の本稿では、議決権行使助言会社および主要機関投資家11社による、八十二銀行の全取締役に対する賛否の行方を予測。その結果、2年前よりも厳しい評価が下される見通しとなり、松下頭取に“一発退場”のリスクが浮上していることが分かった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

2年前の賛成率は63.22%
八十二銀行が打った秘策とは

 地方銀行の頭取にとって、今年の株主総会はかつてないほど緊張感が高まっている。

 2024年の株主総会では、選任議案の対象となった76人の頭取のうち、6割超の49人が前年よりも賛成率を落とした。中でも最も厳しい評価を受けたのが大分銀行の高橋靖英頭取で、賛成率は74.28%だった。

 ただし、実際に一発退場のリスクが高まっているのは、取締役選任議案が2年に一度しか上程されない頭取である。

 その筆頭が、八十二銀行(長野県)の松下正樹頭取だ。23年の賛成率は63.22%。昨年は選任議案の対象から免れているだけで、前年ワーストだった高橋頭取より10ポイント以上も低い。

 松下頭取の賛成率が低い最も大きな要因は、過剰な政策保有株にある。

 八十二銀行は、22年3月末時点の連結純資産に対する政策保有株の比率が50%に達していた。多くの機関投資家は、政策保有株が20%を超える場合に経営トップの再任に反対する基準を設けており、実際に反対票を投じる根拠としている。また、同行は自己資本利益率(ROE)が低いため、業績基準にも抵触し得る。

 加えて、取締役の改選を2年に一度に限定していること自体も、賛成率を押し下げる可能性がある。

 例えば野村アセットマネジメントは、監査役会設置会社において取締役の任期が2年の場合、会長・社長等の取締役再任に原則として反対する方針を表明している。取締役の改選議案が2年に一回であることで取締役選任の是非を問う機会が限られ、株主視点から監督機能が働きにくくなる点を問題視していると考えられる。

 こうした状況を踏まえ、ダイヤモンド編集部はレクタスパートナーズが提供する議決権行使予測ツール「AGM(定時株主総会)シミュレーター」を用いて、議決権行使助言会社および主要機関投資家11社の議決権行使基準に基づくシミュレーションを実施。25年の八十二銀行の株主総会における全取締役選任議案の賛否を予測した。

 賛否の基準は、ROE基準、政策保有基準などの比較的知名度の高いものに限らず、公開されている基準をすべて含む。

 もちろん、実際の投票では個別事情が加味されるため、シミュレーション通りになるとは限らない。だが、株主がどう判断するのか、その傾向を先取りするには十分だ。

 次ページでは、八十二銀行の全取締役に対する議決権行使助言会社および機関投資家の賛否予測を公開する。2年前よりも厳しい結果となる見込みで、賛成率のさらなる悪化や一発退場も現実的なシナリオになってきた。

 さらに、厳しい評価にさらされる株主総会を目前に、八十二銀行が打ち出した秘策も判明した。その詳細を明らかにする。