株主総会2025#19Photo by Yasuo Katatae

政策保有株を大幅に縮減し、目標達成――。そんな印象を与えたのが、八十二銀行の株主総会招集通知だ。わずか1年で、政策保有株比率が62%から18%に急減している。だが実態は、信越化学工業株をはじめとする大量の株式を「純投資目的」に振り替えたにすぎないことが分かった。特集『株主総会2025』の本稿では、見せかけの縮減で総会を乗り切ろうとする八十二銀行の異例の対応を、直近4年の振替額の推移や、2025年3月期に振り替えた全銘柄の金額とともに徹底検証する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

八十二銀行の政策保有株が激減
純投資に移した全銘柄の金額と推移を検証

 長野県の八十二銀行が、わずか1年で政策保有株の比率を62%から18%にまで引き下げた。株主総会の目前に公表されたこの数字が、投資家の間で波紋を広げている。

 同行は、地方銀行の中で京都銀行や百五銀行に次ぐ政策保有株の多さで知られていた。政策保有株の比率が純資産比で20%を超える企業に対しては、経営トップの再任に反対する基準を設けている機関投資家が多い。そのため八十二銀行の松下正樹頭取には、反対票が集まりやすい状況にあった。

 現に、2023年の株主総会で、松下頭取の賛成率は63.22%と低迷。2年ぶりに選任対象となる今年の株主総会では、昨年までの政策保有株の水準が高止まりしていたため、再任への風当たりは一層強まるはずだった(『八十二銀行・松下頭取が株主総会で「一発退場」に現実味、機関投資家の賛否シミュレーションで判明』を参照)。

 その中で突如示されたのが、冒頭の18%という数字だ。20%の基準をクリアし、政策保有株の縮減が一気に進んだようにも見える。

 だが、ここにはカラクリがある。実は、信越化学工業株をはじめとする政策保有株の多くが、純投資目的へと分類変更されたにすぎなかったのだ。

 このような手法は保有株ウォッシュとも呼ばれ、実質的な縮減を伴わない見せかけの対応として金融庁も問題視してきた。実際、純投資に振り替えた銘柄は、有価証券報告書に過去5年分を開示するよう今年から義務付けられている。そんな矢先、八十二銀行は政策保有株の大胆な振り替えに踏み切ったわけだ。

 次ページでは、25年3月期を含む直近4年間に八十二銀行が振り替えた政策保有株の金額の推移と、今年振り替えた金額の大きい銘柄をランキング形式で公開する。過去のデータをたどれば、今年の対応がいかに異例だったかが見えてくるからだ。6月20日に開かれる株主総会を前に、ぜひ参考にしてほしい。