「バタッと倒れても」と忘れず再び発言
次の選挙に向けた「がんばってる感」

 退院後の小池知事の動きも、怪しいとしか言いようがなかった。ドクターの指示に従って、当面はテレワークに専念するとしおらしく説明し、一度は都庁の会議にリモートで参加していた。

 にもかかわらず、前述のように都議選最終日の7月3日には、電光石火、都ファ候補の応援に都内約20カ所を駆け巡ったというではないか。

 ドクターの指示は、一体どこに消えてしまったのだろうか?こんなことをするから、仮病だったと陰口をたたかれるのだ。

 これもまた、病気という「情報」を自分の思うように操作して、政治利用した典型例だといえる。やはり、この人には診断書を提出させることが必要だ。そうでなければ、都民が何を信じたらいいのかわからないではないか。

 さはさりながら、“病み上がり”のイメージを操って、大敗必至の都ファを14議席減に踏みとどまらせた手腕は驚嘆に値する。選挙こそが、小池知事を体調不良から回復させる何よりのカンフル剤なのか。入院や静養より、選挙の方が効果てきめんらしい。

 都議選後、すっかり元気を取り戻した小池知事は7月15日、来日中の国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長から、69歳のバースデイを花束で祝ってもらい、ご満悦であった。

 一方で、翌16日の定例記者会見では、弁舌爽やかであったものの、椅子に腰掛けた状態での質疑応答に終始した。

 過労の状態が、退院後2週間たっても全快していないとするなら、ちょっと解せないと感じてしまうのは、私だけではないだろう。本当の体調を知りたくなるのは人情というものである。

 この日の会見で小池知事は、7月2日の復帰後最初の記者会見で使った「どこかでバタッと倒れているかもしれない」との悲壮感を演出する発言を、再び発するのを忘れなかった。だが、こんなセリフは、人の上に立つ者の言うべきことではない。倒れることを前提に東京都知事の責務を果たそうとするのは、本末転倒である。

 会見を動画で見ていて、私は思った。ああ、この人は次の選挙に向けて、「がんばってる感」を演出しているのだな――。公平な情報公開を小池知事に求めても、結局はない物ねだりに終わってしまうのである。