しかし、過去の二人の発言から考えると、李在明氏は文政権以上に「反日」を政治的に利用する可能性が高いとみられる。

 2016年12月に大統領選挙の際にも李氏は遊説中に、「日本は軍事的に韓国の敵性国家だ」と発言。今回の予備選挙でも「(終戦時に)侵略国家の日本が分断されるべきだった」、「(終戦後)韓国は親日勢力と米占領軍が合作して支配体制を維持し、真に独立した形で出発した国ではない」と主張した。

 こうした発言は、李氏特有の「人気取り」を単に狙ったものなのかどうかは不明だが、典型的なポピュリスト的な政治家である李氏が大統領になれば、日韓関係は修復不可能な状態に陥ることにもなりかねない懸念がある。

 対する尹錫悦氏は、大統領の出馬宣言で「歴史の真実を明らかにするのも大事だが、未来世帯のためには実用的に(日本とは)協力すべきだ」と語り、8月6日には、福島原発の処理水問題について、「(文政権)以前は問題にしなかったのではないか。その時々の政治的な立場で取り扱うべき問題ではない」と、日本の立場に理解を示すような発言をした。

 この発言では、左派系メディアが尹氏の日本観を問題視し、与党支持者からもバッシングを受けているが、これら言動が尹氏の哲学に基づく本心からのものであれば、少なくとも李氏に比べると、大統領になれば、日韓の間でも関係改善の動きが出て、「大人の関係」が築ける可能性もある。

(龍谷大学教授 李 相哲)