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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

「理論は現実に従う」
したがってグローバル企業は
自らの道は自ら探るしかない

上田惇生
【第312回】 2012年11月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
2520円(税込)

 「企業にとって、国境はもはや決定要因ではない。それは制約要因、阻害要因、複雑化要因でしかない。今日の決定要因は、没国家のグローバル市場である」(ドラッカー名著集(15)『マネジメント─課題、責任、実践』[下])

 第二次世界大戦後、多少の所得と情報が得られただけで、世界中が同一の需要パターンを発展させた。自動車、医療、教育、テレビ、映画が世界共通の需要となり、世界は一つのグローバルなショッピングセンターとなった。

 その結果、あらゆる企業がグローバル企業として行動しなければならなくなった。

 当時、このグローバル企業を表す言葉がなかった。そこで、多国籍企業なる言葉が使われた。しかしそれは、現実を説明するというよりも、混乱させる言葉だった。当時すでに、多国籍企業であることの機会と問題は、多国籍であること、すなわち多国における事業の展開にあるのではなかった。

 グローバル企業にかかわる問題のすべては、需要、ビジョン、価値観において共通のものとなったグローバル市場の現実を受けて、グローバル企業自らがグローバルな存在になっていくことにあった。

 ところが、このグローバル市場の発展には、政治体制の発展が伴わなかった。皮肉なことに、経済のグローバル化が進展した時期は、各国の政治体制が、国家主権に経済の舵取りを任せたときだった。そのため、じつに300年ぶりに経済と政治が分離した。

 グローバル企業にとって意味あるものは、国民経済の集積ではない、独立した存在としてのグローバル市場である。

 ところがわれわれは、グローバル市場の現実を説明する理論を持たない。したがって、グローバル企業のための理論も持たない。「理論は現実に従う」からである。グローバル経済の現実は、それほどに新しい。

 「グローバル企業は、グローバル経済という新しい現実を反映した存在であるがゆえに重要である。資源の最適化の最も有効な機関であるがゆえに重要である。だがそれは、昨日の企業の延長ではなく、新しい現実を反映した存在であるがゆえに、健全に育つ保証はない。しかし、グローバル企業が健全に育ちえないとなれば、グローバルな規模における豊かさは望むべくもない」(『マネジメント』[下])

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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