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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

現場の仕事は不得意だがなすべきことは山ほどある
政府に必要なのは分権化

上田惇生
【第368回】 2014年1月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
2520円

 「構造と秩序の原理としての分権化の目的は、トップマネジメントを強化し、トップとしての仕事を行えるようにすることである。すなわち、実行はそれぞれの使命と目的をもつ現場のマネジメントに任せ、中央のトップが意思決定と全体の方向づけに集中できるようにすることである」(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)

 ドラッカーは、続けてこう言った。この原理を国に適用するならば、実行の任に当たる者は、政府以外の組織でなければならない。国における分権化とは、実行にかかわる部分は、政府以外の組織に行わせることである。

 つまり民営化とは、組織における分権化の原理を社会に適用することにほかならない。

 こうしてドラッカーは、1969年の『断絶の時代』において、「手を広げすぎて疲れ果て、不能となった政府という中年疲れを元気にするには、社会のための仕事の実行の部分を民営化しなければならない」と提案したのだった。

 この本は、大転換期の到来を告げるものとして、世界中で世紀のベストセラーとなった。

 しかし、この民営化を説く部分だけは、およそあらゆる学者が無視した。政治家が無視し、官僚が無視した。なぜならば、当時はまだ、政府と社会は蜜月関係にあり、あらゆる問題が、政府に任せれば解決したも同然と信じられていたからだった。じつに、進歩とは「どこまで政府に任せられるか」を意味していたのだった。

 だが、そのような状況の下にあって、この民営化の政策を、米国のドラッカー教授の提案と断ったうえで、マニフェストに入れた政党が世界に一つだけあった。

 それが、英国の保守党だった。

 サッチャーが政権を取り、経済を立て直したことから、政策の基本としての民営化が一挙に世界に広がった。日本では国鉄がJRとして再生した。

 ドラッカーは、政府の力を弱めよと言ったのではなかった。強化せよと言ったのだった。人は、機能する社会を必要とし、社会は、機能する政府を必要とするからだった。

 「多元社会においては、統治でき、実際に統治する政府が必要である。しかしそれは、自ら実行する政府ではない。管理する政府でもない。統治する政府である」(『断絶の時代』)

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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