石川県・秋田県の授業から見えてくる
「対話的な学び」の重要性

 先ほど、記述式の正答率が高い理由として普段の授業のあり方が関係していると紹介した。特に石川と秋田では、先進的な授業がより多く行われている。

「学校質問紙」(全国学力・学習調査の一環として、各学校の教員を対象に学校での取り組みなどについて質問したもの)の回答を見ると石川と秋田に共通する、授業の特徴が見えてくる。

 次の二つの質問の結果をご覧いただきたい(以下、「(1)よく行った」と答えた上位4都府県の割合と全国平均との差を示す)。

授業において,児童・生徒自ら学級やグループで課題を設定し,その解決に向けて話し合い,まとめ,表現するなどの学習活動を取り入れましたか

【小学校】石川+7.5/秋田+9.5/福井-4.5/東京+1.9
【中学校】石川+7.2/秋田+10.2/福井+7.3/東京+1.9
「全国学力・学習状況調査【都道府県別】学校質問紙」2021年を基に筆者作成

児童・生徒の発言や活動の時間を確保して授業を進めましたか
【小学校】石川+8.2/秋田+8.6/福井0.0/東京-0.4
【中学校】石川+6.7/秋田+10.7/福井+2.5/東京-6.6
「全国学力・学習状況調査【都道府県別】学校質問紙」2021年を基に筆者作成

 授業には講義型、問答型などさまざまな形があるが、石川と秋田は「対話型」の授業が多いことがうかがえる。学習指導要領で重視されている「対話的な学び」である。

「対話的な学び」とは、ただ正解を求めるのではなく、子ども同士が対話をしながら課題に対して試行錯誤し、解明を進めていくというような授業・学習のこと。

 秋田県ではそのような形の授業を「探究型授業」と呼び、県内の小・中学校で行っている。これらの授業を丁寧に行うことで、無回答率(設問に対し、答えを書かなかった子どもの割合)も低くなってくる。前述のOECDの学力調査「PISA」で、日本の子どもの無回答率がOECD平均と比べて高いことが問題として指摘されてきたが、それは普段の授業・学習を変えていけば改善が見込めるのだ。