不動産バブル対応で
実力を試される共産党政権

 足元の中国経済を俯瞰的に考察すると、1989年頃のわが国経済によく似た事象が発生している。その象徴が不動産バブルだ。リーマンショック後、中国経済は投資主導の経済運営を重視した。その中で、エバーグランデなどは借り入れを増やして大規模にマンション建設などを進め、不動産価格は上昇した。

 急速な金融引き締めなどによってバブルを崩壊させたわが国の教訓をもとに、中国は不動産バブルの温存を図った。具体的に、共産党政権は住宅価格の上下に合わせて金融政策や不動産向け融資などに関する規制を調整した。その結果、不動産投資はGDP(国内総生産)の2割程度を占めるまでに増えたと指摘する中国経済の専門家もいる。

 しかし、借り入れに依存した巨額の投資(投機)は未来永劫(えいごう)続くものではない。エバーグランデの債務規模は約33兆円(名目GDPの約2%)にまで増加した。同社は中国不動産バブルの膨張を象徴する存在といえる。中国の非金融民間部門の債務残高もGDPの200%を超えた。日本は89年後半のバブル絶頂期、非金融民間部門の債務残高はGDPの2倍に達した。

 中国不動産バブルはピークを迎えつつあるといえるだろう。その危機感から昨年夏以来、共産党政権は、「灰色のサイ」と呼ばれる債務問題の深刻化を警戒し、「三条紅線」(3つのレッドライン)を示して不動産業者の債務増加を抑制し始めた。その結果、エバーグランデは新規の借り入れによる利払いや債務の返済が困難になり、デフォルト懸念が高まっている。

 わが国は90年代に入り、バブル崩壊後の不良債権処理などを迅速に進めることができず、経済は長期の停滞に陥った。エバーグランデの債務危機の本質は、共産党政権が不動産バブルとその後始末にどう対応するか、その実力が試されている。