中国版リーマンショックの発生はあるか

 エバーグランデの債務がどう処理され、その影響がどの程度、中国および世界経済に広がるかは、共産党政権の判断が決定的な影響を持つ。共産党政権の行動が中国発の金融危機のリスクに影響するといえる。

 世界経済の歴史を確認すると、本格的な救済がなされたか否かを基準に、金融危機は2つに分類できる。本格的な救済がなされた代表的ケースが98年の「LTCMショック」だ。それは、当時の米有力ヘッジファンド、ロング・ターム・キャピタル・マネジメントがロシア国債のデフォルトなどによって巨額の損失を発生させ、経営危機に陥ったことをいう。それとは反対に、本格的な救済がなされなかった典型例が2008年9月のリーマンショック(当時の米投資銀行大手リーマン・ブラザーズの経営破綻)だ。

 LTCMショックとリーマンショックの共通点は、低金利環境と過度な成長への楽観が続く中で、借り入れを増やして(レバレッジをかけて)投機的な取引を増やしたことだ。その後、投資の失敗や資産価格の急落によってLTCMもリーマンも経営体力を失った。

 そして、その後の救済の有無が、経済全体への波及を左右した。

 1998年のLTCMショックでは、米FRB指揮下で民間金融機関が救済融資に応じた。その結果、LTCMショックの影響は金融セクターに抑え込まれ、経済全体に深刻な影響が及ぶ展開は回避された。FRBは利下げも行った。

 一方、2008年のリーマンショックでは、金融緩和は行われたが本格的な救済がなされなかった。リーマン・ブラザーズの経営破綻の結果、米国を震源地に世界的に金融システムが混乱し、金融の目詰まりが起きた。その結果、雇用や生産、消費など実体経済にショックが波及した。

「大きくてつぶせない」と言われる企業のデフォルトや破綻は、金融システム不安を引き起こし、実体経済に負の影響が波及する。それを防ぐために公的資金の注入などによる救済は欠かせない。