臨時総会の開催を阻む
数々のハードル

 まず、臨時総会を開催まで持っていくことが簡単ではない。

 普通総会、臨時総会にかかわらず、総会は「議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない」(標準管理規約第47条第1項)と定められており、その人数(定足数)が出席すること(委任状による代理人、議決権行使書の提出を含む)で初めて成立する。

 なお、総会や決議については、それぞれに成立するための定足数が定められているが、これが結構勘違いされやすい。総会が成立するために必要な定足数は「議決権総数の半数以上」であり、「過半数」ではない。たとえば議決権総数が200のマンションの場合、総会成立のための定足数は100となる。過半数の101ではないので注意したい。

 通常総会の場合は理事長が総会通知を発するが、理事長による招集のため、委任状や議決権行使書は集まりやすい。一方、組合員による通常総会の招集の場合、委任状や議決権行使書は集まりにくいといえる。

 さらに、マンション外に住む区分所有者に対しては、臨時総会の招集を通知すること自体が困難になる。理事会や管理会社に問い合わせても、個人情報保護の観点から、外部区分所有者の住所を教えてもらえないことがよくあるからだ。

 また、後述するが、理事会に外部区分所有者について問い合わせすると、臨時総会開催の動きを察知されることになる。臨時総会の議案内容によっては、理事会に先手を打たれてしまう可能性もあるため、その点にも注意を払う必要がある。

 理事会や管理会社から外部区分所有者の情報を得られない場合には、その部屋の登記簿謄本を取り寄せて、臨時総会の招集通知を発送しなければならないため、そうした手間と時間がかかることも計算に入れなければならない。

 要するに、組合員が臨時総会を招集する場合、招集に必要な「組合員総数の5分の1以上」「議決権総数の5分の1以上」の同意は比較的集めやすいものの、実際に総会を成立させるための定足数である「議決権総数の半数以上」を達成するのは容易ではないということだ。

 たとえば議決権総数200のマンションなら、40の同意があれば臨時総会を招集できるが、総会当日には、最低でも100の出席がなければ総会は成立せず、「流会」になってしまうのだ。