「行動ファイナンス」という学問分野は、10年ほど前に、ダニエル・カーネマン氏がノーベル経済学賞を取ったこともあり、今では大変有名になった。
行動ファイナンスが、投資家の側よりも、金融商品の売り手の側で体系的に応用(顧客側から見ると「悪用」といってもいい!)されていることは、筆者が本欄でも繰り返し書いている。しかし、この研究は本来、投資家の判断上の弱点を教えてくれる点で、投資家の側でも役に立つはずだ。
今回は、個人投資家が行動ファイナンスから学ぶべき教訓を7カ条の心得にまとめてみた。
その一、「自分も含めて、人間は間違うと知る」。損得の上で合理的な計算と、「こんな感じがする」という感情は、しばしば違った結論をもたらすが、人は多くの場合、後者に引きずられがちだし、自分の判断の価値を過大評価する傾向がある。例えば、運用者Aと運用者Bを比べると、一方が他方よりもいいと「感じる」かもしれないが、通常、アマにもプロにも、そのような判断力はない。
その二、「気休めのために売買しない」。多くの投資家が、過剰な売買による手数料コストのおかげで運用パフォーマンスを悪化させていることが、繰り返し研究されている。株価の短期的な上下を当てようとする売買や、一度で済む売買を何度かに分けるような売買は、平均的にはうまくいかないし、あなたの場合ならうまくいく、という根拠はない。
その三、「過去を将来に当てはめない」。例えば、過去の3年とか5年といった期間にもうかったからといって、そのアセットクラス(「国内株式」など)や銘柄、あるいは運用者などが、今後ももうけさせてくれるとはいえない。運用においては、過去のデータを直接将来に当てはめることが間違いになる場合が多い。しかし、人は、自分の経験を「法則」のように考えたがる傾向がある。