県警は運転士の具体的な過失や認否について明らかにしていないが、同日付の朝日新聞(電子版)は「県警が運転士から聴取したところ、最高速度の120キロが出ているかなどを確認するため、速度計に気をとられていた疑いが判明した。県警は、運転士が自身の運転技術に自信やこだわりがあり、信号の確認やブレーキの使用が遅れたとみている」と報じている。

 事故が起きた踏切には障害物検知装置が設置されており、踏切の鳴動後に障害物を検知した場合は特殊信号発光機(特発)と呼ばれる専用の信号機が点滅。それを視認した運転士が手動でブレーキ操作をする仕組みになっている。事故当時も装置は正常に作動していたが、踏切までに停止することができず時速約62キロ(推定)でトラックに衝突した。

 運輸安全委員会の事故報告書によれば、3カ所に設置されたうち最も遠い位置にある「特発(遠)」は踏切から572メートルの地点で視認可能で、適切なブレーキ操作を行えば常用ブレーキで約517メートル、非常ブレーキの場合は約477メートルで停止できる。

 しかしながら「予期しないタイミングで停止信号を現示する特殊性がある特殊信号発光機に対し、即座に反応することは困難」であったことに加え、特発が「架線柱等により、特発(遠)の明滅状態が瞬間的ではあるが断続的に遮られる場面があった」ために気づくのが遅れ、衝突に至ったとしている。

 だが県警の見解は異なるようだ。前記の朝日新聞によれば、県警は実況見分や関係者への聴取をもとに「ブレーキや信号は正常に機能し、設備の点検や京急社内の安全教育も『不適正な行為は認められなかった』」として、運転士のブレーキ操作に問題があったと見ており、事故調査報告書が指摘する特発の視認性についても、「(信号が)見え隠れする状況であっても見通しに問題はないと判断」したようだ。

運転士の責任のみを
強調する誤り

 過去にも似た事例がある。2015年2月にJR西日本山陽線西阿知~新倉敷駅間の八人山踏切で列車とトラックが衝突した事故では、岡山県警が2017年9月に列車の運転士を業務上過失往来危険と業務上過失傷害の疑いで書類送検し、同年12月に略式起訴されている。

 この事故でも運輸安全委員会は、踏切から637メートル地点から320メートル地点付近にかけて300メートル以上にわたり特発が架線柱の死角に入って視認できない区間が存在したことが、ブレーキの遅れに関与した可能性があると指摘していた。