先週、このコラムで、ハイアールのCEO張瑞敏氏が、家電製品メーカーである同社を製造業からサービス業に変えようと考えたことを披露した。たしかに、工場内を歩き回ると、そのような趣旨を書いたスローガンも見られる。しかし、製造業からサービスへ変身するには、大きな隔たりがあり、飛び越えなければならない壁も結構ある。ハイアールは一体どのようなの道を歩んでいるのか。その実態を知りたい。そのため、私は販売最前線を回ることにした。

間取りを見ながら
最適な商品を提案

 私が訪問したのは、青島市の東にあるハイアールの専売店である。普段、「東城社区店」と呼ばれる。“社区”とはコミュニティのことだ。現在、都市開発が進む中国の都市部では、集合住宅が集まる一角、つまり日本流に言う団地を指す場合も結構ある。この東城社区店は、まさに高層住宅が林立する地域の一角にある。

 店内に入ってまず目をひかれたのは、数台の液晶テレビの前に、お客さんとの相談用に設けられた数脚のテーブルだ。そこは相談コーナーだ。新しくできた団地なので、新居用の家電を買うために下見に来るお客さんが結構いる。

お客さんの相談を受けるコーナー

 相談コーナーでは、お客さんが来ると、まずお客さんの住所を確認する。その住所をパソコンに入力すると、お客さんの新居の平面図が出てくる。その新居の間取りやサイズに合わせた商品提案ができる。内装がまだのお客さんには、内装の提案もする。床や壁紙の材質・色、さらに家具などに合わせて、より精度の高い商品提案をする。テレビ画面には、提案された立体図の画面が写る。お客さんはそこで判断する。それでもサイズなどに不安を覚えるお客さんには、自宅まで同行して実寸を測って作業する。

 実は、この相談サービスはクラウドコンピューティングの技術を活用している。店頭のパソコンには周辺の新築マンションのレイアウト図だけではなく、市内の各地のマンション情報も入っている。