民間企業が性急な規制の変更に
振り回される機会は増える

 一つの見方として、新時代の中国経済には党の意向が色濃く反映され、短期間で政策が発表されたり、変更されたりする可能性が高い。民間企業が性急な規制の変更などに振り回される機会は増えるだろう。特に、民間企業の資金調達などへの締め付けは一段と強まり、中国経済の成長を支えたアニマルスピリットは停滞する恐れがある。

 1978年に始まった改革開放によって、中国では経済特区が設けられて国有・国営企業が海外の企業から技術を吸収し、鉄鋼や発電など重厚長大分野で成長した。加えて、共産党政権はITや不動産分野で民間企業の設立を認めた。IT分野では「BATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)」などが急成長した。

 また、不動産分野では地方政府が土地の使用権を開発業者に売却し、その上でマンションなどが建設された。土地の売却収入は地方政府の主要な財源となり、共産党指導部も不動産投資を経済成長のけん引役として重視した。

 その結果、不動産(住宅)投機が増えて「鬼城」と呼ばれる居住者のいないマンションが出現し、負債も急増している。そうした負の側面はあるにせよ、ITや不動産分野における民間の創業経営者のアニマルスピリットが、改革開放から近年までの高い経済成長を支えた。

 そうした過程で貧富の格差が拡大し、社会保障制度への不安も高まった。足元では新型コロナウイルスの感染再拡大もあり、消費を減らす人が急速に増えている。貧富の格差を解消するために、習政権は民間企業への締め付けを強め、寄付や慈善事業の強化を求めている。

 さらには、社会や経済運営に不満を持つ人々が秘密裏に結託して社会心理が不安定化する展開を避けるために、ネット関連の規制も強化している。米リンクトインやヤフーが中国から撤退したのは、規制やデータ開示指示などが強化され、事業運営が難航する可能性が高いからだろう。