ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
山崎元のマネー経済の歩き方

共働きの節税効果と保険代替効果

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第254回】 2012年12月3日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 夫と妻が2人とも仕事と収入を持つ「共働き」という生活形態は、合理的なばかりでなく、かなり「得」でもある。うすうすそう感じていたが、花輪陽子、是枝俊悟『大増税時代を生き抜く 共働きラクラク家計術』(朝日新書)を読んで、なるほどと思った。

 この本には具体的な損得の試算が多数載っているが、印象的だったのは、3歳以上中学生以下の子どもが2人いる夫の年収が900万円の家庭で、年収が100万円増えた場合の「手取り」だ。この100万円が夫の収入として増えた場合、所得税が15.77万円、住民税が7.72万円、社会保険料が12.79万円増え、児童手当が12万円減って、可処分所得の増加は51.72万円にすぎないという。

 これに対して、専業主婦だった妻が100万円稼ぐとすると、住民税が4000円、社会保険料は雇用保険料のみの5000円で、児童手当が所得制限により減ることもないので、可処分所得は99.1万円増加する。

 年収900万円は、100万円年収が増えると児童手当が減る所得水準なので、差が大きく強調されるのだが、それにしても違う。主として、所得税が累進性を持っている一方で、個人単位で計算されるので、こうした差が生じる。

 フリーランスの男性の場合、妻を役員とする小さな会社をつくって、収入を自分と妻とに振り分けて税率を下げている人が少なからずいるが、これも狙いは同じだ。

 片働きなのか共働きなのかで大きな差が出るような税制には問題があるとも思うが、働き手が増えるのは社会的にいい面があるし、家計にとっても好ましい面が多い。

 先の本の中で、花輪さんが強調していることでもあるが、共働きには、家計のリスク管理の上で強力な効果がある。「共働きは、保険だ」といってもいい。

 妻に収入があれば、夫が亡くなったり、病気で働けなくなったりした場合に、生活を立て直すことが容易だ。妻が働きを増やすとしても、彼女の収入だけですべてを賄うことは楽ではないかもしれないし、生活サイズの見直しも必要だろうが、妻が既に稼ぎの手がかりを持っていることは心強い。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


山崎元のマネー経済の歩き方

12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

「山崎元のマネー経済の歩き方」

⇒バックナンバー一覧