ダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「われわれは、一人では強みだけをもつわけにはいかない。強みとともに弱みがついてくる。われわれは、そのような弱みを仕事や成果とは関係のない個人的な欠点にしてしまうよう、組織を作らなければならない。強みだけを意味あるものとするよう、組織を構築しなければならない」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 GEのジャック・ウェルチは、CEO着任時のドラッカーとの対話を発展させて「一位二位戦略」を開発し、事業の選択と集中を進めた。イノベーションに強い企業として名高い世界屈指の消費財メーカーP&GのCEO、A・G・ラフリーは、ドラッカーから、そのイノベーションについて多くを学んでいた。

 パナソニックの中村邦夫は、ある事業を任されたとき、ドラッカーを座右の書としたという。ユニクロの柳井正は、ドラッカーの教えによって今日のユニクロを築いた。このような人たち、このような会社が無数にある。なまじっかの列挙では大勢の人たちに失礼に当たる。しかも、ここでもドラッカーはそれぞれのドラッカーであって、学ぶところ、教わるところは人それぞれに違う。

 大阪で会計士事務所の所長秘書をしていた大塚三紀子さんが、女性が一人で入れる食堂がないことに憤慨し、脱サラして「実身美(サンミ)」という名の玄米カフェを始めた。事業は順調だったが、理想には遠かった。そのとき出会ったのがドラッカーの「強みに築け」だった。

 従業員の一人ひとりはどのような強みを持っているか、自分はどのような強みを持っているか。これらのことを意識しただけで、全員の成長のスピードが上がり、売り上げが4年で10倍になった。

 彼女は「強みに築けとは、個性を見よということであり、成長を信じよということだった。しかも、そのことが、働く者同士がお互いの個性を尊重し合うことにつながった」という。

 「強みを生かすことは、実行によって修得すべきものであり、実践によって自己啓発すべきものである。エグゼクティブたる者は、強みを生かすことによって、個人の目的と組織のニーズを結びつけ、個人の能力と組織の業績を結びつけ、個人の自己実現と組織の機会を結びつけなければならない」(『経営者の条件』)