トイレを思いがけず失敗してしまう理由

 トイレに間に合わないのも、身体の中の感覚が鈍感になっていることから起こることがあるようです。

 普段は意識しませんが、人は空腹感や喉の渇き、尿意などを感じる「内臓感覚」を持っています。この感覚がうまく働かないことによって、「そろそろトイレに行きたいかもしれない」という微妙な変化が感じとれず、急に尿意がやってきてしまうのです。水分補給を忘れて熱中症になってしまうのも同じ理由です。

 また、トイレを失敗する原因と考えられるものは、ほかにもたくさんあって、そのどれが当てはまるのかは、人によって異なります。いつトイレに行ったのかを忘れてしまう、早めにトイレに行くことが難しい、扉の向こうがイメージできず場所がわからずに間に合わない、家やショッピングモールなどの空間の中でトイレの場所がわからない、サインが見つけられない、便器と床が白くて便器の場所がわからない。

認知症の本人から見た世界とは?お風呂に入りたくない、トイレが間に合わない…トイレのドアがわからない
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 原因によって、とることのできる対策も変わってきます。

 この他、本著では「アクセルとブレーキを踏み間違える」「何度も同じ話をする」「お金を盗まれたと思い込む」などのよく聞く話から、「ICカードのチャージ方法や切符の購入方法がわからない」「降車駅や目的地を忘れる・間違える」など、「本人の視点」から認知症を学び、生活の困りごとの背景にある理由を知ることができます。