内田社長は性能について、「エネルギー密度が現在のリチウムイオン電池の2倍で充電時間は3分の1に短縮することが目標」と言う。また、アシュワニ・グプタCOOは「来年からパイロット生産ライン建設に着手し、24年に施策を開始して28年に量産を開始する」とタイムラインを明示した。さらに「コバルトフリーのリチウムイオン電池開発を進め、電池のコストを28年には第2世代リーフと比べて65%コストダウンし75ドル/kWhに」し、「全固体電池では65ドル/kWhにまで引き下げる」という目標も示した。

 全固体電池の開発は、トヨタ自動車が先行しているかと見られていただけに、今回の日産の動きは注目の内容だったと言える。

 このNissan Ambition 2030の発表オンライン会見では、内田社長の明るい表情が際立って見えた。19年12月の社長就任でこわばって緊張していた会見からは打って変わっていた。筆者は、今春に内田社長にインタビューしたがその際に「覚悟を持って構造改革を進め日産復活へ走ってきた。コロナ禍や半導体など不透明な状況はあるが、稼ぐ力へのモメンタムは間違いなく加速している。今年度は必ず黒字化を果たし、いかに外部環境の変化があろうと2%以上の営業利益率を確保したい」と語っていた。

 果たしてその通り、今期連結営業利益で1800億円の黒字になる見通しだ。2期連続の赤字から脱して、いよいよ内田体制は次のフェーズに入ったと言える。

 しかし、黒字転換とはいえ営業利益率は2%にとどまるのも確かだ。今期の黒字化も半導体や部品供給での生産減の中で需給ギャップが販促費の削減をもたらしたという側面もあり、今後の「日産ネクストでの営業利益率5%確保」の道筋は険しい。いわば病み上がりの日産にとって、ゴーン元会長が指摘する通り、長期ビジョンへの莫大な投資の原資をどうするのかという問題は依然残る。本当に、今後5年間での2兆円もの投資ができるのだろうか。