住宅ローン減税の実施・継続は、住宅を取得しやすくするという購入者にとってのメリットばかりが強調されるが、長期的に考えれば国税および地方税の税源として欠くべからざるものであり、住宅取得を推進することが財政の基盤を形成することにつながるのである。

 誤解を恐れずに言えば、住宅取得時のハードルを10年間程度の優遇措置によって引き下げることができれば、その後住宅を所有する期間全般にわたって、長期間の税収確保が可能になるというわけだ。

住宅ローン減税がより幅広く
活用される社会の形成が急務

 その意味では、巡り巡って国や地方自治体に税金として回収されるお金が所有者の手元にあっても、それはさして大きな問題ではないと考えることもできるだろう。

 しかも、住宅ローン減税による負担軽減措置によって還付された税金は、そのまま固定資産税や都市計画税に支払われることも、また一定期間貯蓄されてまとまった金額になったところで住宅ローンの繰り上げ返済に活用されるケースもあるから(もちろん用途は自由だが)、その意味においても会計検査院の“逆ザヤ”との指摘は当たらないように思える。

 このように、住宅購入推進政策は、国や地方自治体の税収を確保するという点で必要欠くべからざる重要政策であり、また国民の住宅購入意欲を維持・喚起することは将来の税収を確実なものにすることに直結するから、住宅産業の健全な発展は国を支える礎(いしずえ)であるともいえる。

 少子化・高齢化の進捗(しんちょく)によって新設の住宅着工戸数は1996年の約164万戸をピークに減少し続けており、2020年は約83万戸とピーク時の約半数となり、2030年には70万戸を割り込む可能性すら示唆されている状況にある。